合同会社設立の電子定款を自社で作成する手順|マイナンバーカード・署名ソフトの選び方と署名後の確かめ方

合同会社の電子定款を自社で作成するとは:社員本人の電子証明書で署名すること
会社法第575条第2項は、合同会社の定款を電磁的記録で作ることを認め、その場合は署名や記名押印に代わる措置をとるよう求めています。会社法施行規則第225条第2項は、この措置である電子署名の条件を二つ挙げています。一つは、その情報を署名した人が作ったと示せること。もう一つは、あとから書き換えられていないか確かめられることです(2026年10月17日にe-Gov法令検索で確認)。
この記事でいう「自社で作成」は、定款の文面づくりから署名までを、社員本人が自分の署名用電子証明書で済ませることを指します。行政書士などに頼む場合は、委任を受けた専門家が自分の電子証明書で署名する形が一般的に案内されています。どちらの電子証明書で署名するかが、自社で作成するかどうかの分かれ目です。
合同会社は公証人の認証が要らないので、社員が署名したファイルがそのまま完成品になり、合同会社設立の登記申請に添付します。株式会社の電子定款のように、公証役場へ送って認証済みのファイルを受け取る段階はありません。そのぶん、署名の付け方や形式を点検する役目も自分に回ってきます。私の場合は定款をfreeeの会社設立サービスで作って電子定款にしたため、Acrobatやプラグインで自分が署名したことはありません。以下は法務省などの案内にもとづく説明です。


出典:e-Gov法令検索:会社法施行規則(第225条 電子署名)
自社で作成する手順①:マイナンバーカードとICカードリーダライタ、利用者クライアントソフト
公的個人認証サービスのポータルサイトでは、パソコンで電子証明書を使う準備として、電子証明書が記録されたマイナンバーカード、ICカードリーダライタ、利用者クライアントソフトの三つを挙げています。カードとリーダライタを用意したあとに、利用者クライアントソフトをダウンロードしてインストールする順番です。ICカードリーダライタは何でもよいわけではなく、同じポータルサイトに対応機種の一覧が載っているので、買う前に照らし合わせておくと安心です。この準備は合同会社の電子定款のためだけのものではないので、e-Taxなどですでにカードをパソコンで使っている人は、手元の機器をそのまま使える場合があります。
マイナンバーカードに入っている電子証明書は2種類あり、電子定款に使うのは英数字のパスワードを設定した署名用電子証明書です。4桁の暗証番号で使う利用者証明用電子証明書とは別物なので、取り違えないようにします。電子証明書の有効期限は、発行から5回目の誕生日かカード自体の期限のどちらか早い日です。さらに市区町村の案内では、署名用電子証明書は氏名や住所が変わると失効するとされています(目黒区の案内で2026年10月17日に確認)。
合同会社の社員が2人以上いる場合は、この準備が全員分必要です。会社法第575条で定款は社員になろうとする者の全員が署名するとされているため、一人でもカードや証明書の準備が間に合わなければ電子定款は完成しません。設立日を決めている場合は、全員の証明書の期限と、引っ越しなどで失効する予定がないかを先に確かめておくと段取りが崩れにくくなります。
- 署名用電子証明書が有効なマイナンバーカード(社員全員分)
- 対応機種一覧に載っているICカードリーダライタ
- 公的個人認証サービスの利用者クライアントソフト
- 署名用パスワード(英数字6〜16桁)を覚えているか


出典:公的個人認証サービス ポータルサイト:利用者クライアントソフトのご利用準備
自社で作成する手順②:署名ソフトを選ぶ(PDF署名プラグイン+Acrobatか、申請用総合ソフトか)
電子署名を付けるソフトは、法務省の登記・供託オンライン申請システムが配っている二つが中心です。一つ目はPDF署名プラグインで、Adobe Acrobatに電子署名の機能を足すものです。同システムの案内では、Adobe Acrobatは別途用意(有料)する必要があるとされています。ダウンロードページには32ビット版(G2.50)と64ビット版(G3.00)のインストーラーがあり、どちらも令和8年5月15日の更新と表示されていました(2026年10月17日に確認)。
二つ目は申請用総合ソフトです。本来はオンライン申請を作って送るためのソフトですが、「PDFファイルの署名」という機能でPDFに電子署名を付けられます。ダウンロードページの表示は9.4A(令和8年10月3日更新)で、.NET Framework 4.8.1が入っている必要があると書かれています。.NET FrameworkはWindowsの仕組みなので、Macだけで自社作成を進めるのは難しいと考えておいたほうが無難です。
二つの大きな違いは、できあがるファイルの形です。PDF署名プラグインはPDFの中に署名を埋め込みます。申請用総合ソフトは、署名したPDFと、署名の情報を入れたXML形式のファイルを別々に出力します。どちらが合うかは、このあと説明する提出方法で変わるので、ソフトを入れる前に、合同会社設立の登記を窓口・郵送で出すのか、オンラインで出すのかを決めておくのが近道です。


出典:登記・供託オンライン申請システム:ソフトウェアのダウンロード
4 自社で作成する手順③:定款をPDFにして社員全員が署名し、署名を確かめる
署名の前に、定款の文面を最後まで固めます。会社法第576条で合同会社の定款に必ず書く事項は、目的、商号、本店の所在地、社員の氏名または名称と住所、社員全員が有限責任社員である旨、社員の出資の目的とその価額または評価の標準です。電子署名は「あとから書き換えられていないこと」を示す仕組みなので、署名したあとに一字でも直せば署名をやり直すことになります。誤字や住所の表記は、PDFにする前に紙に印刷して読み合わせておくと見落としを減らせます。
申請用総合ソフトで署名する場合、法務省の「申請用総合ソフト利用ガイド 商業・法人登記申請【共通編】」(令和6年3月Ver.1.8)では、次の順番で案内されています。処理状況表示画面の「ツール」から「PDFファイルの署名」を選び、署名するPDFと出力先を指定し、「ICカードで署名」を押してカードを差し込み、パスワードを入力します。「署名付与完了」と出たあと、出力先に元のファイルと同じ名前のフォルダができ、PDFとPDF署名ファイル(XML形式)が入っていれば完了です。
PDF署名プラグインを使う場合は、Acrobatで定款のPDFを開いて署名する流れになり、操作はプラグインの操作手引書に従います。社員が複数いる合同会社では、どちらの方法でも全員がそれぞれのカードで署名します。署名が終わったら、署名の数が社員の人数とそろっているか、署名後に保存し直していないかを確かめ、元のPDFと署名済みのファイルを取り違えないよう、名前を付けて分けて保管します。
- 定款の文面を確定し、紙で読み合わせる
- PDFに変換する
- 社員全員がそれぞれのカードで電子署名する
- 署名の数と、署名後に書き換えていないかを確かめる
- 署名済みのファイルを分けて保管する


出典:法務省:申請用総合ソフト利用ガイド 商業・法人登記申請【共通編】(PDF)
つまずきやすい所①:署名の方式と、法務局への提出方法の組み合わせ
自社で作成するときにいちばん気をつけたいのが、署名ソフトと提出方法の組み合わせです。窓口や郵送で書面申請をする場合、電子定款はCD-RやDVD-Rなどの媒体に入れて添付します。法務省の「ご利用の手引き」の表では、媒体に入れるファイルの形式は「PDF(Public-Key Digital Signature)ファイル」、署名前の形式はPDFとされ、合計15MB以下という条件も付いています(2026年10月17日に確認)。
この表は、PDFの中に署名が入っている形を前提にした書き方です。PDF署名プラグインで署名したファイルはこの形に当たります。一方、申請用総合ソフトはPDFとXMLの二つのファイルに分けて出力し、法務省のガイドではオンライン申請の添付書面情報として使う流れで説明されています。申請用総合ソフトで署名したファイルを書面申請の媒体に入れてよいかは、手引きの表からは読み取れません。この組み合わせを考えている場合は、署名する前に管轄の法務局に確かめるのが確実です。
逆に言えば、オンライン申請まで自分で進めるつもりなら、申請用総合ソフト一本で署名から送信まで済ませられます。書面申請にするならPDF署名プラグインとAcrobatの組み合わせ、と最初に決めておけば、ソフトの入れ直しを避けられます。合同会社は設立の登記を申請した日が成立の日になるので、組み合わせの確認を申請の直前まで残すと、予定していた設立日に間に合わなくなるおそれがあります。媒体の作り方や申請書の添付書類欄の書き方は、電子定款の添付を扱った記事で詳しく説明しています。


出典:法務省:電磁的記録で作成された添付書面 ご利用の手引き
つまずきやすい所②:資料ごとに違う対応状況と、パスワードのロック
自社で作成しようとして調べると、資料によって書いてある条件が違うことに気づきます。たとえば日本公証人連合会が2024年9月に作った手順資料では、PDF署名プラグインはAdobe Acrobat Pro(32bit版)にのみ対応と書かれています。一方、2026年10月17日に見た法務省のダウンロードページには64ビット版のプラグイン(G3.00)も載っていました。資料が作られた時期で内容が変わるため、ソフトの版や対応状況は、本や解説記事ではなく配布元のページで最新のものを確かめるのが基本です。
もう一つ、当日になって手が止まりやすいのがパスワードです。国税庁のe-Taxのよくある質問では、署名用電子証明書のパスワードは英数字6桁から16桁で、5回連続で間違えるとロックされると案内されています。ロックされたときの対応は公的個人認証サービスのポータルサイトで案内されていますが、署名の予定日にロックされると、その日のうちに電子定款を仕上げられないことがあります。
合同会社の情報は株式会社に比べて少なく、電子定款の手順も株式会社向けの資料を読むことが多くなります。株式会社向けの資料には公証役場への送信や認証の受け取りが出てきますが、合同会社設立では不要な段階です。合同会社の電子定款を自社で作成する場合に関係するのは、機器の準備、署名、署名後の確認、提出方法の部分だけだと分けて読むと、資料どうしの食い違いに振り回されにくくなります。


出典:国税庁 e-Tax:よくある質問(マイナンバーカードのパスワード)
判断が必要な所:電子定款を自社で作成するか、サービスや行政書士に任せるか
電子定款にすると紙の定款の原本にかかる印紙税4万円がかからないと扱われていますが、自社で作成すれば4万円がまるごと浮くとは限りません。PDF署名プラグインの方法ではAdobe Acrobatを別途用意(有料)する必要があり、ICカードリーダライタを持っていなければその購入費もかかります。すでに持っている機器があるか、ほかの用途でもAcrobatを使うかで、実際の差額は人によって変わります。
時間の面では、機器の準備、ソフトの導入、提出方法との組み合わせの確認を自分で引き受けることになります。社員が複数いる合同会社なら、全員の準備がそろうまで待つ必要もあります。会計ソフト事業者などの会社設立サービスや、行政書士に電子定款の作成を頼む方法もあり、行政書士法第1条の3は、官公署に出す書類や権利義務に関する書類の作成(電磁的記録を含む)を行政書士の業務としています。ただし登記の申請まで任せられるのは司法書士です。
代表社員1名の合同会社なら、準備するカードも署名も一人分で済むため、自社で作成する負担は比較的小さくなります。反対に社員が多い合同会社では、全員の機器と日程をそろえる手間が増えます。どれを選ぶかは、手元の機器、社員の人数、提出方法、使える時間で変わり、本を読んでも唯一の答えは出ません。私の場合は会社設立サービスで電子定款を作り、登記は本店所在地を管轄する法務局の窓口に持参して申請しました。司法書士には頼んでいません。自社で作成するか迷うときは、まず提出方法を決め、その方法に合う署名ソフトをそろえる費用と手間を書き出して比べてみてください。


まとめ:合同会社の電子定款を自社で作成する場合と、任せる場合を並べる
合同会社設立の電子定款を自社で作成するには、署名用電子証明書が有効なマイナンバーカード、対応機種のICカードリーダライタ、利用者クライアントソフト、署名ソフトの四つをそろえます。署名ソフトは、PDFに署名を埋め込むPDF署名プラグイン(Acrobatが別途必要)と、PDFとXMLの署名ファイルを出力する申請用総合ソフトがあり、書面申請かオンライン申請かで合うほうが変わります。合同会社は公証人の認証が要らないので、社員全員が署名したファイルがそのまま登記申請に添付する定款になります。
自分で進める場合は、機器とソフトの費用を負担し、資料ごとに違う対応状況や形式の確認も自分で引き受けます。サービスや行政書士に任せれば手間は減りますが、利用料や報酬がかかり、登記の申請まで任せられるのは司法書士です。私の場合は会社設立サービスで電子定款にしたので印紙は貼っていません。どの方法が合うかは、機器の有無、社員の人数、提出方法で変わるため、断定はできません。
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