
合同会社設立の住所=本店所在地:定款は市区町村まで、申請書は番地まで書く
合同会社設立で「会社の住所」と呼ばれているものは、書類によって求められる細かさが違います。会社法576条は、持分会社の定款に書かなければならない事項の一つとして「本店の所在地」を挙げています。一方で914条は、合同会社の設立の登記で登記する事項として「本店及び支店の所在場所」を挙げています。定款は「所在地」、登記は「所在場所」と、言葉が使い分けられている点が出発点です。
法務局が公開している合同会社設立登記申請書の記載例では、定款の条文が「当会社は、本店を○県○市に置く。」となっていて、「定款に定める本店所在地は最小行政区画まででも構いません」という注記があります。これに対し、申請書の「本店」欄と登記すべき事項は「○県○市○町○丁目○番○号」まで書く形で示されています(2026年10月17日に確認)。
定款を市区町村までにした場合は、番地まで含めた具体的な場所を別に決めなければなりません。記載例の注記では、業務執行社員の過半数で本店の所在場所を決定する必要があるとされ、「代表社員、本店所在地及び資本金決定書」の見本が付いています。定款で番地まで書いたときは、この決定書の本店の項目は要らないとも書かれています。どちらの書き方にするかは定款の作り方とつながっているので、定款の条文を固める段階で決めておきます。なお、私の場合は定款を freee の会社設立サービスで作り、電子定款にしました。
- 定款:本店の所在地(最小行政区画=市区町村までで足りる)
- 決定書:定款を市区町村までにしたとき、番地までの所在場所を業務執行社員の過半数で決める
- 登記申請書・登記すべき事項:番地まで正確に書く
- 定款で番地まで書いた場合は、決定書の本店の項目は不要


合同会社設立の住所を決める前に:管轄の法務局と、同じ本店に同じ商号がないかを確かめる
本店をどこに置くかで、登記を申請する法務局が決まります。法務省の「商業・法人登記 Q&A」にも、会社の本店をどこに置くかによって管轄登記所が定まると書かれています。合同会社設立の登記は本店所在地を管轄する登記所に出すので、住所の候補が固まった段階で管轄も調べておくと、その後の予定が立てやすくなります。私の場合は、本店所在地を管轄する法務局の窓口に書類を持参して申請しました。管轄の調べ方や、窓口・郵送・オンラインの違いは「合同会社設立 法務局」のテーマで解説しています。
もう一つ確かめたいのが、同じ場所に同じ商号の会社がすでにないかです。商業登記法27条により、他人がすでに登記した商号と同一で、かつ本店の所在場所も同一のときは、その商号を登記できません。法務省の案内では、オンライン登記情報検索サービスを使ってインターネットで商号調査ができ、検索だけなら無料とされています(2026年10月17日に確認)。バーチャルオフィスやシェアオフィスのように、多くの会社が同じ住所を使う場所では、とくに先に調べておきたい点です。
住所を決める順番にも気をつけてください。本店の住所は定款・決定書・登記申請書のすべてに出てくるため、書類を作り始めてから変えると、何通も作り直すことになります。候補をいくつか挙げ、管轄と商号の重なりを確かめてから一つに絞り、そのあとで書類づくりに入ると手戻りを減らせます。

出典:法務省:オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について
合同会社設立の住所を自宅にする場合:登記で公開される範囲と、賃貸契約の確認
合同会社設立の本店を自宅にしても、登記の手続きそのものは変わりません。法務省が示している設立登記の主な添付書類にも、本店にする建物の所有や賃貸借を証明する書面は挙がっていません(2026年10月17日に確認)。申請書の書き方は、ほかの住所を本店にする場合と同じです。
自宅を選ぶ前に知っておきたいのは、本店の所在場所は登記事項で、誰でも確認できるという点です。法務省の「商業・法人登記 Q&A」には「誰でも手数料を納付すれば会社の登記事項証明書を取得することができます」と書かれています。自宅を本店にすると、自宅の番地まで含めた住所が、会社の情報として公開された状態になります。取引先や顧客に住所を知られてもよいかは、登記の前に考えておきたいところです。
賃貸住宅や分譲マンションの場合は、登記の手続きとは別に、契約や規約の問題があります。賃貸借契約や管理規約で事務所としての使用を制限していることがあり、登記できたとしても契約違反になるおそれがあります。契約書と規約を読み、はっきりしなければ貸主や管理会社に確認してから決めるのが安全です。また、許認可が必要な業種では、事務所の要件が定められているものがあります。自宅で要件を満たせるかは、業種ごとに所管の行政庁へ確認してください。
自宅を本店にした合同会社では、引っ越しの予定も考えておきたい点です。代表社員の転居と本店の移転が重なると、代表社員の住所の変更と本店移転の二つの登記が必要になり、管轄の外へ移るなら申請書も増えます。数年以内に転居する見込みがあるなら、その費用と手間を、自宅を選ぶことで抑えられる家賃と比べてみると判断しやすくなります。


合同会社設立の住所にバーチャルオフィスを使う場合:契約時の本人確認と注意点
自宅の住所を出したくない人が、合同会社設立の本店にバーチャルオフィスの住所を使うことがあります。この場合も登記申請書の書き方は同じで、法務局に出す書類が増えるわけではありません。違いが出るのは、バーチャルオフィスと契約する段階です。
経済産業省の案内では、犯罪収益移転防止法で「郵便物受取サービス業者」が特定事業者として定義され、取引時確認、確認記録と取引記録の作成・7年間の保存、疑わしい取引の届出などの義務が課されているとされています。郵便物受取サービス業者とは、自分の所在地を顧客が郵便物の受取場所として使うことを許諾し、顧客宛ての郵便物を受け取って引き渡す事業者のことです(2026年10月17日に確認)。郵便物の受取と転送を行うバーチャルオフィスはこの要件に当たりうるため、契約時に本人確認書類の提出や、利用目的の確認を求められると考えておくのが自然です。
申込みから住所を使えるようになるまでの日数は事業者によって違うので、定款を作る前に確認しておくと予定が立てやすくなります。同じ住所を多くの会社が使うため、前の見出しで触れた同一商号の調査も欠かせません。法人口座については、開設できるかどうかは各銀行の審査で決まり、本店の種類だけで決まると公表されているわけではありません。たとえば三菱UFJ銀行の法人口座の案内では、履歴事項全部証明書(発行から6か月以内)のほか、主な事業や口座の利用目的の確認があり、パンフレットや見積書などの提出を求める場合があるとされています。ここは経済産業省と銀行の公開情報にもとづく説明で、心配な場合は申し込む銀行に直接確かめてください。
バーチャルオフィスを本店にした合同会社では、会社宛ての郵便物が登記した住所に届くことが多くなります。転送の頻度によっては、期限のある書類に気づくのが遅れることもあるため、転送の方法と回数は契約前に確かめておきたい点です。自分で設立手続きを進める場合、設立直後は届出の書類が続くので、郵便物の受け取り方は早めに決めておくと安心です。


5つまずきやすい所①:定款・決定書・申請書で、合同会社の住所の書き方がそろわない
合同会社設立の書類で住所がらみの不備が起きやすいのは、書類ごとに書く範囲が違うからです。定款を市区町村までにしたのに、番地までの所在場所を決めた決定書を付け忘れる。定款で番地まで書いたのに、申請書と表記が微妙に違う。どちらも、定款と登記の「所在地」「所在場所」の違いを意識していないと起こりがちです。
表記の細部も、解説によって書き方が分かれます。法務局の記載例は「○丁目○番○号」の形だけを示していて、建物名や部屋番号を書く例は載っていません。建物名まで登記に入れるかどうか、住居表示と地番のどちらで書くかといった点は、本やサイトで扱いが違うことがあります。迷った場合は自己判断で決めず、管轄の法務局の手続案内で確認するのが確実です。
定款の書き方は、将来の手間にも関わります。定款を市区町村までにしておけば、同じ市区町村の中で本店を移しても定款の文言は変わりません。番地まで書いた場合は、移転のたびに定款の変更も必要になります。ただし、どちらの場合でも本店の所在場所が変われば登記は必要で、定款の書き方で省けるのは定款変更の部分だけです。
登記が終わったら、登記事項証明書を取り、本店と代表社員の住所が意図した表記で登記されているかを一度確かめておくと安心です。銀行口座の開設や税務署への届出では、この登記された表記を書き写すことになります。


つまずきやすい所②:代表社員の住所は登記される|住民票・印鑑証明書との関係
会社の住所をどこにしても、代表社員個人の住所は別に登記されます。会社法914条は、合同会社の設立の登記事項として「合同会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所」を挙げています。定款にも、社員の氏名または名称と住所を書くことになっています(576条)。合同会社の本店をバーチャルオフィスにしても、代表社員の自宅住所が登記簿に載る点は変わりません。
株式会社には、令和6年10月1日から代表取締役等住所非表示措置があります。ただし法務省の案内ページでは、対象は株式会社の代表取締役、代表執行役または代表清算人とされていて、2026年10月17日に確認した時点で合同会社の代表社員は含まれていません。対象をすべての会社に広げる商業登記規則等の改正案が公表され、日本経済団体連合会が2026年8月21日付で意見を出していますが、改正の内容と時期は確定した情報を確認できていません。申請前に法務省の最新の案内を見てください。
「住民票は要るのか」という疑問もよく見かけます。法務省が示す設立登記の主な添付書類には、住民票の写しは挙がっていません。書面で申請する場合は、会社の印鑑を届け出る印鑑届書に、代表社員個人の印鑑証明書(市区町村が作成してから3か月以内のもの)を付けます。印鑑証明書には住民登録の住所が載るので、定款・申請書・印鑑届書に書く代表社員の住所は、この表記にそろえておくと照合で迷いません。私は期限が気になり、申請の直前に印鑑証明書を取り直しました。
設立後に代表社員が引っ越した場合は、会社法915条により、変更が生じてから2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければなりません。自宅を本店にしていると、本店移転の登記も別に必要になります。


判断が必要な所:合同会社の住所をどこにするかと、あとで本店を移すときの費用
自宅、バーチャルオフィス、賃貸の事務所のどれを合同会社の本店にするかに、決まった正解はありません。住所が公開されることをどこまで受け入れられるか、来客や郵便物がどれくらいあるか、毎月の費用をどこまでかけられるか、許認可の要件があるかで、選び方が変わります。本を読んでも答えが出ない、事業ごとの判断です。
判断の材料として、あとで本店を移すときの費用を知っておくと役立ちます。国税庁の登録免許税の税額表では、本店の移転の登記は1箇所につき3万円です(令和8年4月1日現在の法令等。2026年10月17日に確認)。法務局の記載例では、管轄の外へ移す場合、旧本店の登記所あてと新本店の登記所あての2通の申請書を、同時に旧本店の登記所へ出す形になっていて、登録免許税はそれぞれ3万円と書かれています。定款の変更が必要な場合は、総社員の同意書なども付けます。
仮の住所で設立して早めに移す予定なら、この費用と手間を最初から見込んでおくことになります。逆に、長く使う見込みのある住所なら、移転の費用はかかりません。銀行口座や許認可への影響は、本店の種類だけでは決まらず、銀行や所管の行政庁ごとに確認が必要です。迷う場合は、司法書士・税理士などの専門家に事業の見通しとあわせて相談してください。
もう一つの材料が、合同会社には役員の任期がないことです。株式会社のような任期ごとの役員変更の登記がないぶん、自分で設立したあとに法務局へ登記を出すきっかけとしては、本店や代表社員の住所の変更が代表的なものになります。住所が変わりそうな予定があるかどうかも、住所選びの材料に入れておいてください。


出典:法務局:合同会社本店移転登記申請書(管轄外移転)記載例
まとめ:合同会社設立の住所を、自分で決める場合と専門家に頼む場合で並べる
合同会社設立の住所は、定款では市区町村まで、登記申請書では番地まで書くのが基本の形です。定款を市区町村までにした場合は、番地までの所在場所を決めた書面が要ります。住所を決める前に管轄の法務局と同一商号を確かめ、自宅なら公開の範囲と契約、バーチャルオフィスなら契約時の本人確認を確認しておくと、手戻りを減らせます。会社の住所とは別に、代表社員の住所も登記され、2026年10月17日時点では合同会社に住所の非表示措置はありません。
自分で進める場合は、司法書士への報酬がかからない代わりに、書類ごとの住所の書き方、決定書の要否、表記のそろえ方を自分で確認します。参考までに、金銭出資のみ・代表社員1名・窓口申請だった私の場合は、補正の連絡はなく約1週間で登記が終わりました。専門家に頼む場合は報酬がかかりますが、書類の作成と申請を任せられ、本店の候補についても相談できます。どちらが合うかは、事業の内容や住所の事情で変わるため、断定はできません。
当サイトでは、判断が必要な部分を相談したい人向けに、会計事務所SoVaの「士業伴走プラン」を紹介しています。設立サポート手数料は0円ですが、設立後の顧問契約(月1.5万円〜)が前提です。遷移先のページには「自分でやるより最大14.5万円お得」という比較も載っていますが、この数字の出典は遷移先のサービスページで、顧問契約を結ぶことが条件です。最新の料金と条件は必ず公式ページで確認してください。

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