合同会社設立は自分でできる?本人が進められる作業と、頼んだほうが早い作業を分けて解説

合同会社設立で自分でできる作業:基本事項の決定から登記申請まで
合同会社の設立は、作業に分けて見ると、ほぼすべてを本人が担える手続きです。法務省の案内では、合同会社の設立の登記は会社を代表すべき者が申請することになっており、申請人は代表社員本人です。専門家が関わるのは、本人に代わって書類を作ったり申請したりする場面で、関わらなくても手続きは成り立ちます。
作業を順に並べると、まず商号・本店所在地・事業目的・資本金・事業年度・代表社員といった基本事項を決めます。次に定款を作り、出資金を払い込み、登記申請書と添付書類をそろえて、本店所在地を管轄する法務局へ申請します。登記が終わったら、税務署や年金事務所などへの届出に移ります。このうち、基本事項を決める作業はもともと本人にしかできません。専門家に依頼しても、商号や事業目的の候補を出すのは依頼する側です。
つまり「自分でできるか」という問いは、実際には「書類づくりと申請と届出のうち、どこまでを自分で担うか」という問いに置き換えられます。私の場合は、定款の下書きにfreeeの会社設立サービスを使い、残りの書類づくりと法務局への申請は自分で行いました。
株式会社と比べると、合同会社には定款の認証という工程がないため、公証役場とのやり取りが最初から発生しません。自分でできる作業が多いと言われる背景には、この工程の少なさがあります。その代わり、定款の記載の誤りに気づく役目も本人に回ってきます。作業の数が少ない分、一つひとつの確認を自分で担う、と理解しておくと見誤りません。
- 基本事項の決定:本人にしかできない(依頼しても決めるのは自分)
- 定款・登記書類の作成:自分でできる/作成サービス・専門家も使える
- 法務局への登記申請:申請人は代表社員本人
- 設立後の届出:本人が出せる/税務の書類は税理士にも頼める


自分でできる作業①:定款と登記書類は、法務局の様式と作成サービスで作れる
書類づくりは、自分でできるかどうかを一番気にされる作業ですが、合同会社なら材料は公開されています。法務局の「商業・法人登記の申請書様式」のページには、合同会社設立登記申請書の様式(Word・PDF)と記載例、印鑑届書の様式が置かれています(2026年10月17日に確認)。記載例のPDFには、申請書のほか定款や払込みを証する書面の例も入っているので、これを手元に置けば一式の形が分かります。
もう一つの方法が、会計ソフト事業者などの会社設立サービスです。質問に答えていくと定款や申請書の下書きが出てくるので、ゼロから書き起こす手間は減ります。ただし、サービスを使っても書類の作成者・申請人は本人のままで、出てきた書類を記載例と見比べて、自分の会社に合っているかを確かめる作業は残ります。
書類づくりで自分の手が止まりやすいのは、形式よりも中身です。事業目的の書き方、本店所在地を定款にどこまで書くか、代表社員を定款で直接定めるかといった点は、様式を埋めるだけでは決まりません。逆にいえば、中身さえ決まっていれば、合同会社の書類づくりは自分でできる範囲に収まります。私の場合は代表社員を定款で定めたため、就任承諾書は付けていません。
定款を紙で作るか電子で作るかも、自分で選ぶ項目です。国税庁の印紙税の案内では、会社設立時に作る定款の原本には4万円の印紙税がかかります。電子定款なら収入印紙は要りませんが、電子署名の環境が必要です。合同会社の定款を電子化する環境を自分で整えるか、作成サービスの仕組みに乗るかは、費用と手間の両方で比べて決めます。私は電子定款にしたため、印紙代はかかっていません。


3 自分でできる作業②:法務局への登記申請は、窓口・郵送・オンラインから選べる
登記の申請も、合同会社なら本人ができる作業です。出し方は、本店所在地を管轄する法務局の窓口に持参する方法、郵送する方法、オンラインで申請する方法の3つがあります。どれを選んでも申請人は代表社員本人で、違うのは準備するものと、手続きの途中で自分が動く場面です。
オンラインで出す場合、法務局の案内では、マイナンバーカード、ICカードリーダライタ、法務省の申請用総合ソフト、初回の申請者情報の登録が必要とされています。電子署名をすれば代表社員の印鑑証明書を付けずに済み、令和3年2月15日からはオンラインで申請する場合の印鑑の提出も任意になりました(2026年10月17日に確認)。一方で、パソコンの環境を整える手間がかかります。
窓口や郵送で出す場合は、紙の書類一式と、登録免許税分の収入印紙を貼った台紙、印鑑届書を用意します。書類に不備があれば、受け付けたあとに法務局から補正の連絡が来るので、自分で直して出し直します。私は窓口に持参して申請し、補正の連絡はなく、申請から約1週間で登記が完了しました。オンライン申請と郵送は使っていないため、その2つは制度上の説明です。
窓口に持参するか郵送にするかは、合同会社の本店所在地を担当する法務局が通える距離にあるかでも変わります。担当の法務局は自宅の近さではなく本店の場所で決まるため、先に法務局の「管轄のご案内」で調べ、平日の日中に出向けるかを確かめてから出し方を選ぶと、準備のやり直しが減ります。
- 窓口に持参:紙の書類+印鑑届書。受付の場で出せる
- 郵送:紙の書類+印鑑届書。法務局へ出向かずに済む
- オンライン:電子署名が前提。印鑑の提出は任意(令和3年2月15日〜)


出典:法務局:合同会社の設立の登記をしたい方(オンライン申請)
自分でできる作業③:設立後に税務署へ出す法人設立届出書
登記が終わると、合同会社として税務署などに届出をする段階に入ります。ここも本人が出せる手続きです。国税庁の案内(C1-4 内国普通法人等の設立の届出)では、法人設立届出書は法人設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に、定款の写しを添付して、納税地の所轄税務署長に出すことになっています。提出はe-Taxで作成・提出するよう案内されていて、書面で作る場合は1部を持参または送付します(2026年10月17日に確認)。
このほか、青色申告の承認申請、給与を支払う場合の給与支払事務所等の開設届出、都道府県や市町村への法人設立の届出など、会社の状況によって出す書類が増えます。都道府県や市町村の届出は、期限や様式が自治体ごとに違うため、本店所在地の自治体の案内で確かめる必要があります。
届出の書類そのものは、様式に会社の情報を書き写す作業が中心で、自分でできる範囲です。ただし、どの書類を出すべきかは、役員報酬の払い方や消費税の扱いをどうするかで変わります。届出を自分で出すかどうかより、その前提になる判断を誰とするかのほうが、自分で進める人にとっての分かれ目になります。
なお、法人設立届出書には定款の写しを添付するので、合同会社の定款を電子定款で作った場合も、写しをすぐ出せるようにしておきます。書面で税務署に持参するなら、受付時間にも注意が必要です。国税庁の同じページでは、令和8年10月1日から全ての税務署で総合窓口の受付時間を原則として午前9時から午後3時までにしていると案内されています。

つまずきやすい所①:「自分でできる」の前提が、社員1人・金銭出資に置かれている
合同会社の設立は自分でできる、という解説の多くは、出資者が1人、出資はお金だけ、定款も標準的な内容、という前提で書かれています。前提が書かれていない解説もあるため、自分の条件が違うことに気づかないまま読み進めて、途中で書類が足りないと分かることがあります。
法務局が公開している「合同会社の設立の登記申請(オンライン申請)に必要な添付書面情報」を見ると、社員の人数と代表社員の決め方で添付する書面が変わることが分かります。定款で代表社員や資本金の額を定めていない場合や、本店所在地を最小行政区画までしか定めていない場合は決定書が必要になり、定款の定めにもとづいて業務執行社員の互選で代表社員を定めた場合は、代表社員の就任承諾書が加わります。社員が2名なら、定款には2名分の電子署名が要ります。
現物出資をする場合も、書類と確認の手間が増えます。私は社員1名・金銭出資のみだったため、複数社員や現物出資の設立は実体験がなく、制度上の説明にとどめます。こうした条件に当てはまる場合は、「自分でできる」と書かれた解説の前提が自分と同じかを、最初に確かめてください。
合同会社では、社員は全員が出資者で、原則として業務を執行する社員が会社を代表します。社員が増えると、誰が業務を執行し、誰を代表社員にするかを定款でどう定めるかという設計の作業が加わり、添付する書類の数もそれに連動して変わります。この設計の部分は、手順書をなぞるだけでは決まりません。


出典:法務局:合同会社の設立の登記申請(オンライン申請)に必要な添付書面情報
つまずきやすい所②:一部だけ頼みたいとき、頼める相手が作業ごとに違う
合同会社の設立を自分で進めていて、途中の一部だけを頼みたくなったときに迷うのが、誰に頼めばよいかです。司法書士法第3条は、他人の依頼を受けて、登記に関する手続の代理や、法務局に提出する書類の作成、これらの相談を行うことを司法書士の業務と定めています。第73条では、司法書士でない者がこれらの業務を行ってはならないとされています(他の法律に別段の定めがある場合を除く。2026年10月17日にe-Gov法令検索で確認)。
税務署への届出では、税理士法第2条が、他人の求めに応じて税務書類を作成することや税務相談を税理士の業務として定めています。つまり、登記の申請を代わりにしてもらうなら司法書士、設立後の税務の書類や相談なら税理士、というように、作業によって頼める相手が分かれます。定款の作成については行政書士が扱っている例も多く見られます。
会社設立サービスや代行をうたう業者を比べるときは、どの作業を誰が担当するのか、自分に残る作業は何かを確認しておくと、思っていた範囲と違ったという事態を避けられます。自分でできる部分を先に済ませておけば、頼む範囲を絞ることもできます。
合同会社の設立代行をうたうサービスの中には、書類の作成だけを担当し、申請は本人が行う形のものもあります。料金表の「設立代行」という言葉だけで判断せず、登記申請書に誰の名前が申請人や代理人として載るのかを確かめておくと、頼んだつもりの作業が自分に残っていた、という食い違いを防げます。


自分でできるかより先に、判断が必要な項目:資本金・役員報酬・社会保険
手順の作業は自分でできても、答えが一つに決まらない項目があります。合同会社の設立でいえば、資本金の額、事業年度、役員報酬、社会保険の扱いです。これらは書類の書き方ではなく、自分の事業に合わせた判断なので、本を何冊読んでも答えは出ません。私は設立前に解説書を5冊読みましたが、解説書が示してくれるのは判断の材料までで、答えは事業ごとに違います。
社会保険について、日本年金機構の案内では、常時従業員を使用する法人事業所は、事業主のみの場合を含めて厚生年金保険と健康保険の加入が法律で義務づけられているとされ、新規適用届は事実発生から5日以内に出すことになっています。添付する法人の登記簿謄本は、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものが求められています(2026年10月17日に確認)。役員報酬を定期同額給与として扱うには、事業年度開始の日から3か月を経過する日までに額を決める必要があります(国税庁 No.5211)。
こうした項目は、作業としては自分でできても、決め方しだいで設立後の負担が変わります。期限のある判断が重なるのは登記の直後なので、自分で進める場合も、この時期だけは税理士や年金事務所に確認できる先を用意しておくと落ち着いて進められます。
資本金の額は、合同会社の登録免許税にも響きます。国税庁の税額表では、合同会社の設立登記は資本金の額の1000分の7で、計算した額が6万円に届かなければ6万円です。消費税では、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の新設法人は、納税義務が免除されません。どちらも書類を作る作業ではなく、金額を決める段階で効いてくる判断です。


8 まとめ:合同会社設立で自分でできる所と、頼んだほうが早い所
合同会社の設立は、基本事項の決定、書類づくり、法務局への申請、設立後の届出のどれをとっても、本人ができる作業で組み立てられています。社員1人・金銭出資のみ・標準的な定款という条件なら、自分でできる範囲はほぼ全体に及びます。私の場合は、電子定款・窓口申請で、実費はおよそ6万3千円、基本事項の検討に約2週間、書類の準備に約1週間でした。条件が変われば、日数も費用も変わります。
一方で、社員が複数いる、現物出資がある、平日に法務局へ動けない、設立直後の判断を一人で決めきれない、といった事情があるなら、その作業だけを専門家に頼んだほうが早い場合があります。頼むなら、登記は司法書士、税務は税理士というように作業を切り分け、日本司法書士会連合会が案内しているとおり司法書士の報酬は各事務所が定めるものなので、見積もりと内訳を比べてください。どちらが合うかは条件しだいで、断定はできません。
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