合同会社設立の定款に認証は要らない|公証役場に行かなくてよい理由と、認証の代わりに自分で確かめる範囲

1 合同会社設立の定款に公証人の認証が要らない根拠(会社法・法務省・公証人連合会)
定款の認証とは、公証人が「正当な手続きにより定款が作成されたこと」を証明する手続きです。日本公証人連合会はその目的として、定款や法人格の存立をめぐる紛争を防ぐこと、不正な会社設立を抑えること、マネー・ローンダリング対策として実質的な支配者を確かめることを挙げています。そのうえで同じQ&Aに、合名会社・合資会社・合同会社といった持分会社の定款には公証人の認証を必要としない、とはっきり書かれています。
法律の側から見ると、認証を求める条文は株式会社の規定の中にあります。会社法30条1項は、株式会社の発起人が作った定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じない、と定めています。一方、合同会社を含む持分会社の定款を定めた575条には、社員になろうとする者が定款を作り、全員が署名または記名押印する、とあるだけで、認証の定めはありません。法務省の「合同会社の設立手続について」にも、合同会社の定款については公証人の認証を受ける必要はない、と明記されています。
なぜ扱いが分かれるのか。日本公証人連合会は、株式会社は出資と経営が分かれ、不特定多数の人が関わることを予定した会社なので、設立後の紛争や不正を防ぐ必要性が特に高いと説明しています。合同会社は出資した社員が自分で業務を執行する形が基本で、定款の中身も社員同士の合意で決まります。外部の株主を守るための事前チェックを、制度として置いていないということです。
持分会社には合同会社のほかに合名会社と合資会社があり、無限責任を負う社員がいるかどうかで区別されます。社員全員が有限責任なのは合同会社だけですが、認証が要らない扱いは3つに共通です。「有限責任だから認証が要らない」のではなく、「持分会社だから要らない」と覚えておくと、ほかの解説を読むときに混乱しません。


出典:法務省:合同会社の設立手続について(第3-1 定款の作成)
認証の代わりに進める手順:合同会社の定款を作って署名し、そのまま設立登記に添付する
認証がない合同会社では、定款の手続きは「作る」「署名する」「登記に付ける」の3段階で終わります。まず会社法576条の6項目(目的、商号、本店の所在地、社員の氏名と住所、社員全員が有限責任社員である旨、出資の目的と価額)を入れた定款を作ります。紙で作るなら社員全員が署名か記名押印をし、電子定款にするならPDFに社員全員が電子署名をします。
できあがった定款は、公証役場を通さず、そのまま設立登記の申請書に添付して法務局へ出します。法務局が公開している合同会社設立登記申請書の記載例でも、添付書類の一つめに「定款 1通」とあり、定款の記載例の末尾には「公証人の認証は不要です」という注記が付いています。オンライン申請の添付書面の一覧でも、定款は「公証人の認証は必要ありません」とされ、社員の電子署名だけが求められています。
順番で気をつけたいのは、定款と払込みの前後です。会社法578条は、社員になろうとする者は定款の作成後、設立の登記をする時までに出資の全額を払い込むと定めています。株式会社のように「認証を受けた日」という区切りがないぶん、定款の作成日を自分で決め、その日以降に払込みをし、最後に登記を申請する、という順を自分で組み立てることになります。私の場合は、定款はfreeeの会社設立サービスで作って電子定款にし、払込みは代表社員個人の口座への振込みで行いました。
- 定款を作る(会社法576条の6項目を入れる)
- 社員全員が署名・記名押印(電子定款なら電子署名)
- 作成日以降に出資金の全額を払い込む
- 設立登記の申請書に定款を添付して法務局へ出す


出典:法務局:合同会社の設立の登記申請(オンライン申請)に必要な添付書面情報
株式会社なら公証役場で何をするか:認証手数料と実質的支配者の申告(合同会社では不要な工程)
合同会社で省ける工程を正確に知るには、株式会社の側で何をしているかを知っておくのが近道です。株式会社の定款は、本店の所在地を管轄する法務局に所属する公証人のところで認証を受けます。日本公証人連合会の案内では、認証の手数料は資本金の額などが100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、それ以外は5万円です。令和6年12月1日からは、発起人全員が個人で3人以下、取締役会を置かないなどの要件を満たす資本金100万円未満の株式会社について、1万5千円とする扱いも始まっています(いずれも2026年10月17日に確認)。
このほか株式会社では、定款認証の際に「実質的支配者となるべき者」の申告が求められ、紙の定款なら公証人が保存する原本に4万円の収入印紙を貼ります。認証を受けたあとは、公証役場から定款の謄本を受け取って登記申請に添付します。予約、持参する書類の準備、当日の手続き、謄本の受け取りまでが一続きの工程です。
合同会社には、この一連の工程がまるごとありません。手数料も、実質的支配者の申告も、謄本の交付手数料も発生しません。ただし、印紙税は認証とは別の税金なので、紙で定款を作れば合同会社でも4万円がかかります。「認証が要らない=定款にお金がかからない」ではない点は、次の記事で詳しく扱っています。


公証役場に行かなくてよい範囲:電子定款、設立後の定款変更、一般社団法人との違い
「認証不要」がどこまで及ぶかも整理しておきます。まず電子定款です。株式会社の電子定款は、PDFに電子署名をしたうえで公証人にオンラインで認証を受けますが、合同会社の電子定款は認証を経ず、電子署名をしたPDFをそのまま登記の添付書面として使います。電子定款にしたからといって、合同会社に公証役場の手続きが加わるわけではありません。
次に、設立後の定款変更です。合同会社の定款を変えるには、定款に別の定めがない限り総社員の同意が必要です(会社法637条)。登記事項が変われば変更登記をしますが、公証人の認証を受ける規定はありません。認証の対象として法律に書かれているのは、あくまで株式会社などの設立時の定款です。
紛らわしいのが、同じく少人数で作れる一般社団法人です。日本公証人連合会のQ&Aでは、株式会社と並んで一般社団法人・一般財団法人の定款も認証が必要な法人として挙げられています。「人数が少ない法人なら認証は要らない」という理解は誤りで、要らないのは合同会社・合名会社・合資会社という会社の種類による扱いです。私の場合も、合同会社の定款なので公証役場の手続きはなく、電子定款をそのまま登記の添付書面にしました。


出典:日本公証人連合会:Q1. 定款とは何ですか。何故、公証人の認証が必要なのですか。
つまずきやすい所①:合同会社設立の調べ物に株式会社の「定款認証」の手順が混ざる
定款認証について検索すると、上位に出てくる記事の多くは株式会社向けです。「定款認証の流れ」「必要書類と持ち物」「当日の手順」といった見出しが並び、途中に「合同会社は不要です」と一文だけ添えられていることもよくあります。合同会社を自分で設立しようとしている人が、その一文を読み落として予約の準備を始めてしまうのは、珍しくないつまずき方です。
費用の比較表にも注意が要ります。設立費用の一覧では、株式会社の欄に認証手数料と謄本代、合同会社の欄に「0円」と並べる形がよく見られます。ただ、紙の定款にかかる印紙4万円は認証とは別の税金で、合同会社にもかかります。「定款にかかる費用」の行に何が含まれているのか、認証の手数料なのか印紙税なのかを分けて読まないと、合同会社の欄の0円を「定款は無料」と取り違えてしまいます。
解説書でも同じことが起きます。私は設立前に解説書を5冊読みました。一般に、会社設立の解説は株式会社を中心に組み立てられていることが多く、合同会社の記述は章の一部や比較表の一列にとどまりがちです。迷ったら、株式会社の説明ではなく、法務省の「合同会社の設立手続について」と法務局の合同会社用の記載例に戻るのが確実です。日本公証人連合会のQ&Aも、株式会社の認証にかかる費用をまとめたページを見れば、それが株式会社だけの話だと確かめられます。
「電子定款 認証」という組み合わせで調べたときも同じです。株式会社の電子定款は公証人の認証を受けるので、その手順の説明が多く出てきますが、合同会社の電子定款には認証の工程がありません。電子署名をしたPDFを登記の添付書面にするところまでが、合同会社を自分で設立する人に関係する範囲です。


出典:日本公証人連合会:Q3. 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。
6 つまずきやすい所②:認証がない合同会社の定款は、誤りに気づく人が自分しかいない
認証が要らないことは手間とお金の節約になりますが、裏返すと、登記を申請する前に第三者が定款を読む機会がないということでもあります。株式会社なら公証人の確認で見つかるかもしれない記載の漏れや食い違いも、合同会社では法務局の審査で補正として指摘されるまで表に出ません。補正になれば、窓口へ出向いたり書類を差し替えたりと、自分で設立する人にとっては時間の損失になります。
自分で確かめるときは、定款を「三つの物差し」に当てる方法が使えます。一つめは会社法576条の6項目がそろっているか。二つめは、法務局の合同会社用の記載例と比べて、社員全員が有限責任社員である旨や出資の価額の書き方が同じ形になっているか。三つめは、登記申請書の「登記すべき事項」と一字一句合っているかです。商号の「合同会社」の位置、目的の番号と文言、本店の表記、資本金の額は、ずれが起きやすい箇所です。
紙の定款の場合は、作成日、社員の住所が住民票や印鑑証明書の表記どおりか、署名または記名押印が全員分そろっているかも見ておきます。私の場合は、登記は本店所在地を管轄する法務局の窓口に持参して申請し、補正の連絡はなく、申請から約1週間で登記が完了しました。これは一例にすぎず、確認の手間を省いてよいという意味ではありません。
署名を済ませたあとで誤りに気づいた場合も、認証がない合同会社なら公証役場で手続きをやり直す必要はありません。紙の定款なら直した定款を作り直して社員全員が署名または記名押印をし直し、電子定款ならPDFを直して電子署名をし直します。作成日を改めるなら、払込みの日との前後関係が崩れていないかも合わせて確かめてください。登記を申請する前であれば、自分の手元だけで直せるのは認証がない合同会社の利点の一つです。


出典:法務局:合同会社設立登記申請書の記載例(定款の記載例を含む・PDF)
判断が必要な所:認証不要を理由に合同会社を選ぶか、定款を誰かに見てもらうか
認証が要らないことは、合同会社を選ぶ理由としてよく挙げられます。設立の実費で見ると、認証手数料のほかに登録免許税の最低額も違い、国税庁の税額表では株式会社が15万円、合同会社が6万円です(2026年10月17日に確認)。ただ、会社の形は設立費用だけで決まるものではありません。将来の出資の受け入れ方、取引先の受け止め方、役員の任期や決算公告の有無など、事業の見通しによって重みが変わる要素がいくつもあり、ここは手順ではなく判断の領域です。
もう一つの判断は、公証人の代わりに誰かに定款を見てもらうかどうかです。法務局の登記手続案内では、申請書や添付書類の書き方について相談できますが、事業年度や資本金の額をどうするかといった中身の判断までは答えてもらえません。司法書士に頼めば定款の作成から登記の申請まで任せられ、税理士には決算月や資本金の税務上の影響を相談できます。私は司法書士には頼んでおらず、定款はfreeeの会社設立サービスで作成しました。
社員が複数いる合同会社では、損益の分配や業務の決め方を定款でどこまで決めるかが重要になります。私は該当しなかったため実体験はありませんが、制度上は定款で自由に定められる範囲が広く、その分だけ社員同士の取り決めの重みが増します。公証人のチェックがないことを前提に、どこまで自分で確かめ、どこから専門家に相談するかを決めておくと迷いが減ります。
日程の組み方も、認証がないぶん自分で決められます。株式会社では公証人との日程調整が工程に入りますが、合同会社では、定款の作成日、払込みの日、登記の申請日を自分の都合で並べられます。その自由さは、裏を返せば締め切りを誰も決めてくれないということでもあります。私の場合は、商号や目的などの基本事項の検討に約2週間、定款を含む書類の準備に約1週間かかりました。設立日にしたい日があるなら、そこから逆算して、定款の確認に使う日を先に確保しておくと安心です。


まとめ:合同会社設立の定款認証は不要。自分で確かめる場合と専門家に頼む場合を並べる
合同会社設立の定款には、公証人の認証が要りません。根拠は会社法の条文の構造にあり、認証を求める30条は株式会社の規定で、合同会社の定款を定めた575条は社員全員の作成と署名だけを求めています。電子定款でも、設立後の定款変更でも、合同会社が公証役場の手続きをすることはありません。一方で、一般社団法人は認証が必要で、紙の定款なら合同会社でも印紙税がかかります。
自分で進める場合は、認証手数料も報酬もかからない代わりに、公証人が担うはずだった確認を自分で引き受けます。6項目、法務局の記載例、登記申請書の3つと突き合わせれば、手順としては十分に自力で進められます。専門家に頼む場合は報酬がかかりますが、定款の作成や登記の申請を任せられ、事業年度や資本金の判断も相談できます。どちらが合うかは、社員の人数や事業の見通し、使える時間で変わるため、断定はできません。
当サイトでは、判断が必要な部分を相談したい人向けに、会計事務所SoVaの「士業伴走プラン」を紹介しています。設立サポート手数料は0円ですが、設立後の顧問契約(月1.5万円〜)が前提です。遷移先のページには「自分でやるより最大14.5万円お得」という比較も載っていますが、この数字の出典は遷移先のサービスページで、顧問契約を結ぶことが条件です。最新の料金と条件は必ず公式ページで確認してください。


他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
「合同会社設立 定款」を調べている人の参考になればと紹介したいのが、起業・ベンチャーINDEXによる合同会社設立の流れの解説記事。
「合同会社設立 定款」に関心がある人にも役立ちそうなのが、役員が加入対象になる条件を整理していて、一人法人の場合の判断に使える記事。
サイトを開く →「合同会社設立 定款」を調べている中で見つけたのが、必要書類を一覧化していて、申し込み前の準備の確認に使える記事。
「合同会社設立 定款」というテーマで検索していて見つけたのが、合同会社の設立代行を専門に行うサイトによる設立の流れの解説。
sovagroup.co.jp
合同会社を設立するメリット・デメリットは?株式会社との違いも解説
「合同会社設立 定款」を調べている中で見つけたのが、会計事務所SoVaによる合同会社と株式会社のメリット・デメリット比較記事。
「合同会社設立 定款」を調べている人におすすめしたいのが、電子定款の作成部分だけを行政書士に依頼する場合の流れが分かる事務所のページ。
- 会社設立を司法書士に依頼する報酬・費用は?株式会社と合同会社の違い
- 「合同会社設立 定款」について調べている人にも参考になりそうなのが、司法書士報酬の相場を株式会社と合同会社で比較しているまとめ記事。
- 比較ビズまとめ
「合同会社設立 定款」というキーワードとあわせて見つけたのが、代表社員が名乗れる肩書きの選択肢と、業務執行社員との権限の違いを一覧で整理した記事。
vs-group.jp「合同会社設立 定款」を検討している人にも読んでほしいのが、電子定款を自分で作る場合に必要な環境と、その代わりになる方法を整理した記事。
「合同会社設立 定款」に関する情報を探す中で見つけたのが、マネーフォワードによる合同会社設立に必要な人数の解説記事。
- 「合同会社設立 定款」に関連する情報源として確認したのが、税務署へ出す書類ごとに期限を整理していて、相談前の下調べに使いやすいコラム。
- 運営:katsuko-office.jp
ほかに見つかったサイト
- 合同会社の定款作成方法|詳細な記載事項や注意点(GMO起業の窓口)「合同会社設立 定款」を調べている中で見つけたのが、GMOが運営する起業支援メディアによる定款作成の解説記事。
- 合同会社とは?設立方法やメリット・デメリット、株式会社との違い(マネーフォワード)「合同会社設立 定款」に関する情報を探す中で見つけたのが、合同会社の設立方法とメリット・デメリットを整理した記事。
- 合同会社で日本政策金融公庫の創業融資は受けられるのか「合同会社設立 定款」に関心がある人にも役立ちそうなのが、税理士事務所による合同会社と日本政策金融公庫の創業融資の関係を解説する記事。
- 合同会社とは?株式会社との違いやメリット等を専門家が解説(司法書士おおざわ事務所)「合同会社設立 定款」に関心がある人にも役立ちそうなのが、費用の安さと定款による自由なルール設計という観点から合同会社を説明した司法書士事務所のページ。
- 会社設立費用はいくら?株式会社・合同会社の法人設立費用を比較解説(弥生)「合同会社設立 定款」に関心がある人にも役立ちそうなのが、株式会社と合同会社の設立費用を比較した弥生の記事。
- 【会社設立後の手続き】法人登記だけじゃない!やることリストや必要書類・期限を解説「合同会社設立 定款」に関心がある人にも役立ちそうなのが、freeeによる、会社設立後の手続きとやることリストの解説記事。
- 合同会社の設立代行のおすすめは?メリットやデメリット、選び方(マネーフォワード)「合同会社設立 定款」というキーワードとあわせて見つけたのが、合同会社の設立代行サービスの選び方を解説した記事。
- 合同会社の場合、銀行口座開設ができない?口座開設時に気を付けるポイント「合同会社設立 定款」というテーマで検索していて見つけたのが、合同会社の銀行口座開設における注意点を解説した記事。
※ 掲載順は評価や優劣を示すものではありません。同じサイトばかりが同じ位置に並ばないよう、ページごとに並び順と組み合わせを変えて表示しています。
この記事は、合同会社の設立を自分で進める人の役に立ちましたか?


