合同会社設立の資本金はいくらにする?決め方の手順と、857万円・1,000万円で変わる税金・費用を解説

合同会社設立の資本金はいくらから?先に「出資の価額」と「資本金の額」を分ける
資本金をいくらにするかを考える前に、合同会社では金額が二つあることを押さえておくと迷いが減ります。一つは定款に書く「社員の出資の価額」、もう一つは登記する「資本金の額」です。法務局が公開している合同会社設立登記申請書の記載例でも、定款の例には社員ごとの出資の価額(例では300万円と200万円)が並び、資本金の額は別の「代表社員、本店所在地及び資本金決定書」で「金○○円」と決める形になっています。
会社計算規則第44条は、設立時の資本金の額を、出資された財産の価額(設立費用として減ずると定めた額を引いたもの)の範囲内で、社員になろうとする者が定めた額とし、「零以上の額に限る」と書いています(2026年10月17日にe-Gov法令検索で確認)。上限は出資した額、下限は0円で、法律が決めているのはこの枠だけです。枠の中のどこに置くかは、合同会社を設立する人が自分で決めます。出資の価額と資本金の額を同じにする例が多いのは、書類の数字が一つにそろって分かりやすいからです。
つまり「資本金はいくら?」という問いは、実際には「会社にいくら出資するか」と「そのうちいくらを資本金として登記するか」の2段に分かれます。この記事では、まず出資する総額の決め方、次に業種と税金で金額の枠を確かめる手順、最後に判断が必要な部分の順に進めます。0円・1円の扱いや払込み、決定書まで含めた資本金の全体像は、親テーマの記事で解説しています。
- 定款に書くのは「社員の出資の価額」
- 登記するのは「資本金の額」(出資の価額の範囲内)
- 出資のうち資本金にしなかった分は資本剰余金になる
- 会社計算規則第44条:資本金は「零以上の額」


資本金をいくらにするかの決め方①:設立後に出ていくお金を書き出し、会社に入れる総額を決める
金額を決める最初の手順は、会社の口座から出ていくお金を見積もることです。日本政策金融公庫が公開している創業計画書の書式には「必要な資金と調達方法」という欄があり、必要な資金を設備資金(店舗、工場、機械、車両など)と運転資金(商品仕入、経費支払資金など)に分け、調達の方法として自己資金、親や知人などからの借入、金融機関からの借入を並べ、左右の合計を合わせる形になっています(2026年10月17日に確認)。融資を申し込まない場合でも、この欄の形は資本金を考える下書きにそのまま使えます。
書き出すときは、設立登記までの費用と設立後の費用を分けます。登記までの費用は、合同会社なら登録免許税の最低額6万円に、印鑑や証明書の実費が加わります。電子定款にすれば定款の印紙は要りません。私の場合は、この部分の実費が登録免許税を含めて約6万3千円でした。設立後は、家賃、通信費、ソフトの利用料、仕入れなど、最初の売上が入る前に払うお金を月ごとに並べていきます。
次に、その合計を何でまかなうかを決めます。自己資金として出資するのか、代表社員が会社に貸すのか、金融機関から借りるのか。このうち出資にした分が「出資の価額」になり、資本金の上限になります。何か月分の運転資金を見込むべきかに決まりはありません。請求してから入金されるまでの期間が長い事業や、先に仕入れが必要な事業ほど、手元に置くお金を多めに見ておく必要があります。


出典:日本政策金融公庫:各種書式ダウンロード(国民生活事業)創業計画書
資本金の決め方②:許認可が必要な業種は、金額より先に財産要件を確認する
業種によっては、資本金とは別に、許可を受けるための財産の要件が決まっています。代表的なのが建設業です。国土交通省の建設業許可の案内では、一般建設業の許可の要件として、自己資本が500万円以上であること、500万円以上の資金を調達する能力を有すること、許可申請の直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること、のいずれかに該当することが挙げられています(2026年10月17日に確認)。
ここで気をつけたいのは、要件の言葉が「資本金」ではなく「自己資本」や「資金を調達する能力」になっている点です。設立したばかりの合同会社なら、自己資本はおおむね出資した額に近くなりますが、何をもって要件を満たしたと見るか、どの書類で確認するかは業種ごとの手引きで決まっています。建設業のほかにも財産的な基準を設けている許認可があり、金額も確認方法もそれぞれ違います。
手順としては、営む事業に許認可が要るかを所管官庁の案内で確かめ、要るなら財産要件の金額と確認書類を調べ、その金額を下回らないように出資の価額を決める、という順になります。資本金を先に決めて登記してから要件に足りないと分かると、増資の手続きと費用が余分にかかります。私は該当しなかったため許認可の実体験はなく、ここは公開されている案内にもとづく説明です。手引きは改正されることがあるので、合同会社を設立する直前に最新版を確認してください。


資本金の決め方③:いくらにすると税金が変わるか(857万円と1,000万円の境目)
金額の枠が見えてきたら、税金と費用の境目を確かめます。合同会社設立の登録免許税は資本金の額の1000分の7で、6万円に満たなければ6万円です(国税庁No.7191)。境目はおよそ857万円で、それ以下なら資本金が1円でも800万円でも6万円で変わりません。
毎年かかる税金にも境目があります。法人住民税の均等割は、赤字の年でも納める定額の税です。地方税法第52条(道府県民税)と第312条(市町村民税)は、標準税率を資本金等の額と従業者数で区分していて、資本金等の額が1,000万円以下なら道府県民税は年2万円、市町村民税は従業者数50人以下で年5万円、1,000万円を超え1億円以下になると、それぞれ年5万円と年13万円(従業者数50人以下)になります(2026年10月17日にe-Gov法令検索で確認)。実際の税率は自治体が条例で決めるため、本店を置く都道府県と市区町村の案内で確かめてください。
気をつけたいのは、均等割の区分が「1,000万円以下」、消費税の免税の判定が「1,000万円以上」で区切られていることです。資本金をちょうど1,000万円にすると、均等割は低い区分のままでも、消費税は設立1期目から免除されません。また、均等割の基準になる「資本金等の額」は登記上の資本金と同じではなく、法人税法施行令第8条では、出資として払い込まれた金額のうち資本金にしなかった部分も含めて計算します。資本金を小さくして残りを資本剰余金に回しても、この区分は下がらない場合があるということです。具体的な額は税理士か自治体に確認してください。


つまずきやすい所①:「資本金は定款に必ず書く」「資本金=出資金」という説明
解説記事の中には、「資本金は定款の絶対的記載事項」と書いているものがあります。株式会社の定款の記載事項を合同会社に当てはめた説明か、出資の価額と資本金の額を同じものとして扱った説明だと考えられます。法務局の記載例の参考欄では、合同会社の定款に必ず書く事項は、目的、商号、本店の所在地、社員の氏名又は名称及び住所、社員の全員が有限責任社員である旨、社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準、の6つとされ、資本金の額は入っていません(2026年10月17日に確認)。
この違いが表に出るのは、資本金を出資の価額より小さくしたいときです。定款には出資の価額だけを書き、資本金の額は決定書で決める、という形は法務局の記載例そのものです。反対に、定款に資本金の額まで書いておけば、決定書で資本金を決め直す必要はありません。どちらで作ってもかまいませんが、定款、決定書、登記申請書の「資本金の額」と「課税標準金額」が同じ数字になっているかは、申請の前に必ず照らし合わせます。
「資本金=出資金」という書き方も、出資の全額を資本金にした場合に限って当てはまる、と読むのが安全です。合同会社の情報は株式会社に比べて少なく、株式会社の説明を言い換えただけの記事も混ざっています。自分で書類を作るときは、記事の説明よりも、法務局の記載例と条文の言葉を優先してください。


つまずきやすい所②:資本金を「使ってはいけないお金」と思い込む
合同会社の資本金をいくらにするかで迷う理由の一つに、「資本金は会社に置いておくお金で、使うと減ってしまう」という思い込みがあります。資本金の額は、貸借対照表の純資産の部に載る数字で、払い込まれたお金そのものではありません。登記が終わったあとに、払い込まれたお金を事業の支払いに使っても、登記された資本金の額は変わりません。お金を使って現預金が減った分は、費用や資産として別の欄に表れます。
反対に、資本金の額そのものを減らすには手続きが要ります。会社法は、合同会社が資本金の額を減らせる場面を、損失のてん補(第620条)や、出資の払戻し・持分の払戻し(第626条)などに限り、その際には債権者が異議を述べる機会を設ける手続き(第627条)をとるよう定めています(2026年10月17日にe-Gov法令検索で確認)。いったん大きな資本金で登記すると、あとから小さくするのは手間がかかる、ということです。
また、資本金が大きいほど会社が安全、とも限りません。資本金を多めに登記しても、使えば口座の残高は減ります。取引先や金融機関が見るのは登記上の資本金だけではなく、決算書の中身です。資本金は信用の目安の一つにすぎないと考えておくと、見栄えのために生活に必要なお金まで出資してしまう、という失敗を避けられます。

出典:e-Gov法令検索:会社法(第620条・第626条・第627条)
判断が必要な所①:資本金1,000万円前後と消費税の免税判定
国税庁のNo.6531では、基準期間がない法人(設立1期目・2期目)でも、その事業年度開始の日の「資本金の額又は出資の金額」が1,000万円以上なら、消費税の納税義務は免除されないとされています(令和8年4月1日現在法令等。2026年10月17日に確認)。1,000万円未満でも、設立1期目の特定期間(原則として事業年度開始の日以後6か月)の課税売上高が1,000万円を超えると2期目は課税事業者になり、この判定は給与等支払額の合計額で行うこともできます。大きな会社に支配される新設法人の特例もあります。
合同会社で迷いやすいのは、出資の価額と資本金の額を別の数字にした場合です。条文は「資本金の額又は出資の金額」と書いており、資本金を1,000万円未満にしていても出資の総額が1,000万円以上なら判定がどうなるかは、この記事では断定しません。出資と資本金を分けて1,000万円前後を考えている場合は、金額を決める前に税務署か税理士に確認してください。
免税でいることが有利かどうかも一律ではありません。合同会社がインボイスの適格請求書発行事業者になれば、資本金にかかわらず納税義務は免除されません。設立直後に大きな設備投資や仕入れがある事業では、課税事業者として申告したほうが有利になる場合もあります。資本金をいくらにするかは、こうした税の判定と運転資金を合わせて決める項目で、本や記事を読んでも自分の会社の答えは出ません。

出典:国税庁:No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき
判断が必要な所②:最初に多めに出資するか、借入れや増資であとから足すか
会社に入れるお金を全部出資にするか、一部を代表社員から会社への貸付けにするかも、手順ではなく判断の部分です。出資した分は資本金か資本剰余金になり、前の章のとおり、取り戻すには会社法の手続きが要ります。貸付けにした分は、会社の資金に余裕ができれば返済を受けられる一方、決算書では負債として載ります。どちらにするかで会社の見え方も変わるため、決算書を誰に見せる予定があるかも含めて考えます。
あとから資本金を増やす場合の負担も知っておくと、最初の金額を決めやすくなります。合同会社では社員の出資の価額が定款の記載事項なので、出資を増やすには定款の変更が必要で、会社法第637条により、定款に別の定めがなければ総社員の同意で行います。資本金の額が変われば変更の登記も必要で、国税庁No.7191では、合同会社の資本金の増加の登記の登録免許税は増加した資本金の額の1000分の7、3万円に満たなければ3万円とされています(2026年10月17日に確認)。少額の増資でも最低3万円がかかります。
最初に多めに出資しておくか、必要な分だけにして足りなければ借入れや増資で補うかは、運転資金の見通し、許認可、税の境目、増資の手間を並べて決めることになります。私の場合は資本金100万円で合同会社を設立しましたが、この額がほかの人の事業にも合うとはいえません。迷うときは、書き出した資金の表を持って税理士に相談すると、話が早く進みます。


まとめ:合同会社設立の資本金をいくらにするか、自分で決める場合と専門家に相談する場合
合同会社の資本金は、出資の価額の範囲内で0円以上の額を自分で決めます。決め方の手順は、設立後に出ていくお金を書き出して会社に入れる総額を決め、許認可の財産要件を確かめ、登録免許税(約857万円まで6万円)、法人住民税の均等割(資本金等の額1,000万円以下が低い区分)、消費税(1,000万円以上は1期目から課税)の境目と照らし合わせる、という順です。資本金は使ってはいけないお金ではありませんが、減らすには会社法の手続きが要り、増やすにも定款変更と最低3万円の登録免許税がかかります。
自分で決める場合は、報酬がかからない代わりに、資金の見積もりと税の判定を自分で引き受けます。出資者が1人で、資本金を数百万円以下で考えていて、許認可も要らない、という条件なら、この記事の手順で十分に絞り込めます。専門家に相談する場合は報酬がかかりますが、出資と資本金を分ける、1,000万円前後で迷う、許認可の財産要件がある、といった条件では、判断の材料をそろえてもらえます。どちらが合うかは条件しだいで、断定はできません。
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