合同会社設立の定款ひな形:社員1名で作るときの条文ごとの書き換え方と、オリジナルの見本

合同会社設立の定款ひな形は、法務局の記載例を「2名用」として読むところから
定款のひな形は、会計ソフトの会社や設立サービス、士業事務所などが数多く公開しています。どれを選ぶにしても、一度は法務局の「合同会社設立登記申請書」の記載例PDFに載っている定款の例と見比べておくと安心です。一次情報なので、少なくとも登記の実務で受け付けられる形がどういうものかが分かります。
この記載例の定款は、総則に始まり、商号、目的、本店の所在地、公告の方法、社員の氏名・住所・出資・責任、持分の譲渡、社員の相続及び合併、業務執行社員、代表社員、報酬、支配人の選任及び解任、事業年度、計算書類の承認の13か条で組み立てられています。冒頭には「一例です。会社の実情に合わせて作成してください」と書かれ、末尾には公証人の認証は不要という注記があります(2026年10月17日に確認)。
読むときに押さえたいのは、この例が「法人1社と個人1名の、2名の社員がいる合同会社」を前提にしている点です。代表社員を業務執行社員の互選で決める条文、報酬を社員の過半数で決める条文、計算書類に総社員の承認を求める条文は、いずれも社員が複数いるから意味を持つ書き方です。社員が自分ひとりの合同会社では、そのまま写すと不自然になったり、余計な書類が増えたりします。このあと、条文ごとにどう直すかを見ていきます。


出典:法務局:合同会社設立登記申請書の記載例(定款の記載例を含む・PDF)
定款ひな形の書き換え①:商号・目的・本店・公告・社員の欄(会社法576条の項目)
最初に直すのは、会社法576条が必ず書くよう求めている項目です。目的、商号、本店の所在地、社員の氏名または名称と住所、社員が有限責任か無限責任かの別、出資の目的とその価額の6つで、合同会社の場合は「社員の全部を有限責任社員とする旨」を書きます。どのひな形を使っても、この6つが自分の会社の内容で埋まっていなければ定款として足りません。
商号には、会社法6条により「合同会社」の文字を入れる必要があり、他の種類の会社と誤認される文字は使えません。目的は、記載例のように番号を振って並べ、最後に「前各号に附帯する一切の事業」のような一文を置く形が一般的です。本店は、定款では市区町村までにとどめることもできますが、その場合は番地までの所在場所を別に決める書面が必要になります。社員が1名なら、定款で番地まで書いてしまえば、その書面を作る手間が省けます。
公告の方法は、会社法939条4項により、定款に定めがなければ官報に掲載する方法になります。書かなくても官報になりますが、記載例にならって明記しておくと、あとで読み返したときに迷いません。社員の欄は、記載例の2行を1行にし、出資の価額、住所、有限責任社員である旨、氏名を書きます。576条は有限責任社員の出資の目的を金銭等に限っているので、金銭出資のみの合同会社なら出資の目的は金銭、価額は払い込む金額です。
- 商号:「合同会社」の文字を必ず入れる(会社法6条2項)
- 目的:番号つきで並べ、附帯事業の一文で締める
- 本店:番地まで書けば、所在場所の決定書が要らない
- 公告:書かなければ官報(会社法939条4項)
- 社員:1行にし、金銭・金額・住所・有限責任社員・氏名を書く

出典:e-Gov法令検索:会社法(第6条・第576条・第939条)
定款ひな形の書き換え②:業務執行社員・代表社員は「互選」をやめて定款で定める
社員1名の合同会社で一番効果が大きい書き換えが、代表社員の条文です。会社法590条1項は、定款に別段の定めがない限り社員が業務を執行するとし、599条1項は、業務を執行する社員が会社を代表すると定めています。さらに599条3項で、定款か、定款の定めにもとづく社員の互選によって、業務を執行する社員の中から代表社員を定めることができるとされています。
法務局の記載例は、このうち「互選」の形を採っています。互選で代表社員を決めた場合、法務局の書面申請の添付書面の一覧では、代表社員の就任承諾書が必要とされています(2026年10月17日に確認)。社員が自分ひとりなのに互選の条文を残すと、自分で自分を選んだ書面と就任承諾書を用意することになり、手間が増えるだけです。定款の中で「当会社の代表社員は○○とする」と直接書けば、この2つは要りません。私の場合も、代表社員を定款で定めたので、就任承諾書は付けていません。
業務執行社員の条文は、社員が1名なら590条の原則どおりに自分が業務を執行することになるため、書かなくても結論は同じです。ただ、登記では業務執行社員と代表社員の両方が登記されるので、定款にも明記しておくと、登記申請書の内容と並べて確認しやすくなります。報酬の条文は、記載例の「社員の過半数の決議」を残しても一人会社では自分の判断と同じ意味になります。決め方を条文に書くかどうかは任意の記載なので、残すか削るかは好みで構いません。


出典:法務局:合同会社設立登記申請書(代表社員が法人でない場合)の添付書面
社員1名・金銭出資のみの合同会社の定款ひな形(当サイトの独自見本)
ここまでの書き換えを反映した見本を載せます。これは法務局や公的機関が配布している公式のひな形ではなく、会社法576条ほかの条文と法務局の記載例の構成を参考に、当サイトが独自の文言でまとめたものです。民間のテンプレートの文面も転載していません。そのまま使えることを保証するものではないので、自分の会社の内容に置き換えたうえで、管轄の法務局や専門家に確認してください。
法務省の「合同会社の設立手続について」は、定款の記載事項を、必ず書く絶対的記載事項、定款に定めないと効力が生じない相対的記載事項、それ以外の任意的記載事項の3つに分けて説明しています(2026年10月17日に確認)。下の見本では、第1条から第6条が絶対的記載事項、第8条から第11条が相対的記載事項、資本金・事業年度・附則が任意的記載事項にあたります。○の部分を埋め、不要な条文は削ってください。
見本を合同会社の設立に使うときは、埋めた内容を登記申請書の登記すべき事項と一字ずつ突き合わせます。商号、本店、目的、社員の氏名と住所、資本金の額は、定款と申請書で表記がずれると補正の原因になります。また、定款を電子定款にする場合は、結びの記名押印欄の代わりに社員本人がPDFに電子署名をするので、㊞の部分は使いません。紙で作る場合でも電子で作る場合でも、条文の中身は同じで構いません。合同会社の設立を自分で進めるなら、この見本は清書の前の下書きとして使い、最終形は自分の会社の事情に合わせて決めてください。
- (名称)第1条 当会社は、○○合同会社と称する。
- (事業内容)第2条 当会社は、次に掲げる事業を行うことを目的とする。(1)○○ (2)○○ (3)前各号に関連する一切の事業
- (本店)第3条 当会社の本店は、○○県○○市○○町○丁目○番○号に置く。
- (公告)第4条 当会社の公告方法は、官報に掲載する方法とする。
- (社員及び出資)第5条 当会社の社員の氏名及び住所並びに出資の目的及びその価額は、次のとおりとする。○○県○○市… ○○○○ 金銭 金○○万円
- (社員の責任)第6条 当会社の社員は、全て有限責任社員とする。
- (資本金)第7条 当会社の資本金の額は、金○○万円とする。
- (業務執行社員)第8条 社員○○○○は、業務執行社員として当会社の業務を執行する。
- (代表社員)第9条 当会社を代表する社員は、○○○○とする。
- (持分の譲渡)第10条 社員は、他の社員全員の承諾を得なければ、持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
- (相続による承継)第11条 社員が死亡したときは、その相続人は、当該社員の持分を承継して社員となることができる。
- (事業年度)第12条 当会社の事業年度は、毎年○月1日から翌年○月末日までとする。
- (附則)当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から令和○年○月末日までとする。
- (結び)以上、○○合同会社を設立するため、この定款を作成し、社員が次に記名押印する。令和○年○月○日 有限責任社員 ○○○○ ㊞


つまずきやすい所①:ひな形に残りがちな「複数社員向け」の条文
定款のひな形をダウンロードして空欄だけを埋めると、社員が複数いる前提の条文がそのまま残りがちです。一人会社だからといって登記ができなくなるとは限りませんが、自分の会社に合わない条文は、読み返したときの混乱のもとになります。
代表的なのが持分の譲渡の条文です。会社法585条1項は、他の社員全員の承諾がなければ持分を譲渡できないと定め、2項と3項は、業務を執行しない有限責任社員の持分について、業務執行社員全員の承諾で譲渡できる特例を置いています。法務局の記載例が「585条2項及び3項は適用しない」と書いているのは、この特例を外して、すべての社員の承諾を求めるためです。社員が自分だけで、業務を執行しない社員がいない合同会社では、この一文の実益は小さく、残しても削っても構いません。
計算書類の承認の条文にも同じことが言えます。会社法617条が持分会社に求めているのは、計算書類を作成し、作成した時から10年間保存することです。記載例の「総社員の承認を求める」という定めは、複数の社員の間で決算を確認するための任意の取り決めと読めます。支配人の条文も、支配人を置く予定がなければ要りません。株式会社用のひな形が混ざっていないかも確かめてください。発行可能株式総数、取締役、株主総会といった言葉が出てきたら、それは合同会社の定款ではありません。


出典:e-Gov法令検索:会社法(第585条・第590条・第599条・第617条)
つまずきやすい所②:商号の確認と、ひな形どうしで書き方が食い違う所
ひな形を2つ以上見比べると、同じ内容なのに書き方が違う箇所に必ず出会います。本店を市区町村までにするか番地まで書くか、資本金の条文を置くか置かないか、目的の最後の一文を「附帯する」とするか「関連する」とするか、などです。これらは多くの場合どちらも許される書き方で、正誤ではなく選択の違いです。
食い違いに迷ったときは、それが576条の必須項目に関わるのか、添付書面の要否に関わるのか、単なる言い回しなのかで分けて考えると整理できます。必須項目に関わるものは漏れがないことが最優先、添付書面に関わるもの(本店の書き方、代表社員と資本金の定め)は自分が作る書類が少なくなる側を選び、言い回しは好みで決めて構いません。
商号は、ひな形の段階で確認しておきたい項目です。法務省の案内によると、同じ商号で同じ本店所在場所の会社がすでに登記されていると、設立の登記はできません。登記・供託オンライン申請システムのオンライン登記情報検索サービスで調べられ、商号調査のための検索だけなら手数料はかからないとされています(2026年10月17日に確認)。定款を清書してから商号を変えると条文を直す手間が増えるので、書き換えに入る前に調べておくと安全です。

判断が必要な所:一人の合同会社で、相続と事業年度の条文をどう書くか
ひな形では決まらず、自分で判断しなければならない条文があります。一人会社で特に重いのが、社員が亡くなった場合の定めです。会社法607条1項は社員の死亡を退社の事由とし、641条4号は「社員が欠けたこと」を解散の事由としています。一方、608条1項は、社員が死亡した場合に相続人が持分を承継する旨を定款で定めることができるとし、定めがあれば、相続人は持分を承継した時に社員になるとされています(2項)。
このため、社員が1名の合同会社では、相続の定めを置くかどうかで、自分に万一のことがあったときに会社が続くかどうかが変わりうる、と多くの解説で指摘されています。どのような文言にするか、相続人が複数いる場合にどうなるかは、家族の状況や事業の性質によって答えが違います。私は該当しなかったため実体験はないが、制度上はこうなっている、という範囲の説明にとどめますので、条文の書き方は司法書士などの専門家に相談してください。
事業年度も、ひな形の「4月1日から翌年3月31日まで」をそのまま写してよい項目ではありません。決算月は、最初の事業年度の長さ、繁忙期と決算作業の重なり、設立後3か月以内に決める役員報酬の時期などに関わります。資本金の額を定款に書く場合は、消費税の免税の判定にも関わります。これらは税務の判断なので、税理士や税務署に確認したうえで条文に落とし込むのが確実です。


出典:e-Gov法令検索:会社法(第607条・第608条・第641条)
まとめ:合同会社設立の定款ひな形を自分で書き換える場合と、専門家に頼む場合
合同会社設立の定款ひな形は、法務局の記載例を2名用の見本として読み、会社法576条の6項目を自分の内容で埋め、代表社員と本店と資本金を定款で定め、複数社員向けの条文を整理すれば、社員1名の会社でも自分で仕上げられます。公証人の認証は要りませんが、紙で作る場合は原本に印紙税4万円がかかります(国税庁 No.7141 の第6号文書。2026年10月17日に確認)。電子定款なら印紙は不要です。私の場合は、freeeの会社設立サービスで定款を作って電子定款にしたため、印紙代はかかっていません。
自分で書き換える場合は、報酬がかからない代わりに、条文の取捨選択と、相続や事業年度のような判断を自分で引き受けます。専門家に頼む場合は報酬がかかりますが、会社の事情に合わせた条文を作ってもらえ、判断の部分も相談できます。どちらが合うかは、社員の人数、家族の事情、事業の見通しで変わるため、一概には言えません。
当サイトでは、判断が必要な部分を相談したい人向けに、会計事務所SoVaの「士業伴走プラン」を紹介しています。設立サポート手数料は0円ですが、設立後の顧問契約(月1.5万円〜)が前提です。遷移先のページには「自分でやるより最大14.5万円お得」という比較も載っていますが、この数字の出典は遷移先のサービスページで、顧問契約を結ぶことが条件です。最新の料金と条件は必ず公式ページで確認してください。

出典:国税庁:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで
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