合同会社のデメリットは「株式会社が前提」だったこと|自分で設立して情報の少なさに困った場面

手順:解説を読むときに、まず「合同会社の話かどうか」を確認する必要があった
合同会社の設立を自分で進めると決めてから最初に身についたのは、目の前の解説が合同会社の話なのか株式会社の話なのかを、読み始める前に確認する習慣でした。会社設立について書かれた記事や書籍は数多くありますが、その多くは株式会社を主に想定しています。
見出しに「会社設立」とだけ書かれている記事を読み進めていくと、途中から公証役場での定款認証の話になり、そこで初めて株式会社の手続きを説明していたと気づく、ということが何度もありました。合同会社の定款には公証人による認証が不要なので、その部分は自分には関係がありません。
関係のない説明を読んでいた時間そのものは、1回あたりは数分です。しかし設立の準備期間を通して積み重なると、無視できない量になりました。私たちは途中から、記事を開いたらまず「合同会社」という語を本文中で検索し、実際に扱われているかを確認してから読むようにしました。
書籍でも事情は似ていて、株式会社と合同会社の両方を扱う本では、合同会社の記述が章末や補足にまとめられていることがあります。合同会社の設立を自分でやるなら、合同会社に十分なページを割いている本を選ぶほうが、結果的に早く進みます。
この作業は制度上の不利ではなく、あくまで情報環境の問題です。ただ、自分で設立する人にとっては、実際にかかる時間として現れるデメリットだと考えています。


手順:様式と記載例を合同会社用に探し直した
登記の書類を作る段階でも、同じことが起きました。申請書の様式や記載例は法務局が公開していますが、一覧の中から合同会社に該当するものを自分で選び取る必要があります。株式会社向けの様式のほうが種類も多く、検索でも先に見つかりやすいためです。
合同会社の設立登記では、株式会社と添付する書類の構成が違います。定款の認証を受けた謄本が不要である一方、代表社員や本店所在地を決めたことを示す書面が必要になるなど、対応関係を自分で組み立てなければなりません。株式会社の記載例をそのまま参考にすると、必要な書面を取り違える可能性があります。
私たちは、法務局が公開している合同会社設立登記申請書の記載例をまず手元に置き、それを基準にして書類を組み立てました。本や解説サイトは、その様式のどの欄が何のためにあるのかを理解するために使い、様式そのものは一次情報から取るという分け方です。
この探し直しの作業は、株式会社であれば発生しません。合同会社を自分で設立する場合の実質的な追加作業として、時間を見込んでおくとよいと思います。
同じことは、書類の分量を見積もるときにも起きました。株式会社向けの解説に載っている「設立登記に必要な書類の一覧」をそのまま自分の準備リストにすると、合同会社では不要な書類が混ざり、逆に必要な書面が抜けます。私たちは一度この形でリストを作ってしまい、法務局の記載例と突き合わせる段階で作り直すことになりました。
最初から合同会社用の一覧を基準にしていれば起きなかった手戻りです。準備の初期段階ほど、参照する情報が合同会社のものかどうかを確認する価値が高いと感じています。

つまずき:代表社員の住所は登記事項として公開される
設立を進めるなかで、制度そのものの違いとして意識しておいたほうがよいと感じたのが、代表者の住所の扱いです。登記事項証明書は手数料を払えば誰でも取得できるため、登記された代表者の氏名と住所は公開されている情報ということになります。
この点について、法務省の案内によれば、株式会社の代表取締役・代表執行役・代表清算人については、一定の要件のもとで住所の一部を登記事項証明書に表示しないという措置が令和6年10月1日から始まっています。ただし、この措置の対象は株式会社であり、合同会社は対象外とされています。
つまり、合同会社を自宅を本店として設立する場合、代表社員の住所は登記事項として公開される前提で考える必要があります。株式会社について「住所を非表示にできるようになった」という話を先に見ていると、合同会社でも同じだと思い込みかねない部分です。私たちも、この違いは一次情報を確認して初めてはっきり把握しました。
これは情報環境の問題ではなく、制度上の差です。合同会社を選ぶことのデメリットとして、費用や信用の話より先に確認しておくべき項目だと考えています。なお、ここに書いた内容は2026年9月2日時点で法務省の案内を確認したものです。制度は変わることがあるため、実際の判断の際はご自身で最新の内容をご確認ください。


つまずき:「代表社員」という肩書きが選択肢にない場面があった
合同会社の代表者の肩書きは「代表社員」です。ところが、各種の申込みフォームや書類の役職欄には、代表取締役を前提とした選択肢しか用意されていないことがありました。選択肢から選ぶ形式の欄では、当てはまるものがなく、その他の欄に書き込むことになります。
この場面で困るのは、どう記入するのが正しいのかがその場では判断できないことです。登記されている肩書きは代表社員なので、そのとおりに書けばよいはずですが、フォームの想定と違う入力をしてよいのか迷います。私たちは、登記事項証明書に記載されているとおりに書く、という方針で通しました。
肩書き自体は、対外的には代表や社長といった呼称を名乗ることもできるとされています。ただし、登記上の肩書きは代表社員であるため、公的な書類では登記どおりに書くという整理が必要になります。この二重構造も、株式会社にはない手間です。
一つひとつは小さな引っかかりですが、設立の前後で書類を出す機会は多いので、その都度考えることになります。合同会社の設立を自分で進めるなら、登記事項証明書を手元に置いて、迷ったらそこに書かれた表記に合わせるのが確実だと思います。
関連して、社名の表記でも同じ性質の手間がありました。「株式会社」であれば前株か後株かという程度の話ですが、合同会社では、そもそも略称の書き方が場面ごとに揃っていません。登記上の商号は正式名称のままなので、私たちは書類では省略しないという方針にしました。名刺やウェブサイトのように登記と直接結びつかない場面だけ、読みやすさを優先しています。

5つまずき:検索しても合同会社向けの情報が上に出てこない
調べものをするとき、検索語に「合同会社」と入れても、結果の上位に株式会社向けの解説が並ぶことがありました。会社設立に関する情報は株式会社を扱うものが圧倒的に多いため、検索結果もその比率を反映しているのだと思います。
私たちは対処として、検索語に「合同会社」だけでなく「代表社員」「業務執行社員」といった合同会社に固有の語を組み合わせるようにしました。これらの語は株式会社の解説には出てこないため、合同会社を扱ったページに絞り込みやすくなります。
また、費用や税額のように数字が関わる項目は、解説サイトを経由せず、最初から法務局・国税庁のページを見に行くようにしました。数字は解説サイトごとに前提の書き方が違い、どちらの会社形態の話なのかが曖昧なまま書かれていることもあるためです。
設立件数で見れば、合同会社は新設法人の中で相応の割合を占めるようになってきています。それでも、公開されている解説の量には依然として差があり、自分で設立する人はその差を検索の工夫で埋めることになります。
もうひとつ有効だったのは、解説サイトを探すのをやめて、行政機関のサイト内だけを検索する方法です。法務局や国税庁のサイトに絞って調べると、そもそも情報量が少ないぶん、目的のページにたどり着くまでが短くなります。合同会社の設立を自分でやるなら、この探し方を早めに覚えておくと調べる時間がかなり短縮できます。

出典:東京商工リサーチ:2025年の「合同会社」設立4万4,991社 前年比6.8%増で、新設法人の約3割占める
つまずき:設立後の手続きでも同じことが起きた
情報や様式が株式会社を前提にしているという問題は、登記が終わったあとの手続きでも続きました。税務署への届出や社会保険の手続きでは、提出する書類そのものは会社の種類で大きく変わりませんが、記入例や解説が株式会社を想定していることがあります。
例えば、役員に関する欄の説明が取締役を前提に書かれていると、合同会社の業務執行社員がそこに当たるのかを自分で判断することになります。私たちは、判断に迷った項目は窓口で直接確認するようにしました。確認すれば答えは得られるので、手間はかかっても行き止まりにはなりません。
ここで効いてくるのは、聞ける相手がいるかどうかです。私たちは法務局と税務署の窓口で確認しながら進めましたが、そのために平日の時間を確保する必要がありました。自分で設立する場合、この時間も含めて見積もっておくのが現実的です。
なお、私たちの実体験は設立からおよそ1年の範囲に限られます。それ以降の運営実務については経験していないため、この記事では扱っていません。

限界:情報の少なさが今後どうなるかは分からない
ここまで書いてきたのは、制度の不利というより、合同会社を扱う情報や様式の整備が株式会社ほど進んでいないことによる手間です。この状況が今後どう変わるかについては、私たちには見通しを述べる材料がありません。
設立件数が増えれば解説も増えるという方向はありえますが、行政の様式や各種フォームの選択肢がどう変わるかは制度運用の話であり、予測できるものではありません。この記事で書けるのは、2025年に自分で設立したときにこうだった、という記録までです。
また、代表社員の住所が登記事項として公開される点についても、将来的に扱いが変わる可能性がないとは言えませんが、現時点では合同会社は非表示措置の対象外です。実際に設立を判断する時点で、必ず法務省の最新の案内をご確認ください。
これらを踏まえてもなお合同会社を選ぶかどうかは、設立費用や運営の負担、事業の性質と合わせた総合的な判断になります。私たちは自分たちの条件では合同会社を選びましたが、条件が違えば結論も変わるはずです。
もうひとつ、この記事で扱えていない領域があります。融資や出資を受ける場面、複数の社員で運営する場面、従業員を採用する場面で、合同会社であることがどう働くかについては、私たちは経験していません。これらは体験談としてではなく、公開されている情報にもとづく説明としてしか書けない領域です。当サイトでも、そうした部分は解説として扱い、実体験の範囲と区別するようにしています。
デメリットを検討するときは、自分の事業がこの先どの場面に進む可能性があるかを先に考え、その場面について書かれた情報を探すという順番が現実的だと思います。合同会社の設立を自分でやるかどうかは、手続きの手間だけでなく、その先の見通しとあわせて決めるものだからです。

まとめ:デメリットは「制度」と「情報環境」に分けて見る
合同会社のデメリットを考えるとき、制度そのものの違いと、情報や様式の整備状況の違いは分けて見たほうが判断しやすいと感じています。前者にあたるのが、代表社員の住所が登記事項として公開され、株式会社向けの住所非表示措置の対象外であるという点です。これは調べれば分かることなので、設立前に確認しておけば済みます。
後者にあたるのが、この記事で多くを割いた手間の話です。解説が株式会社を前提にしている、様式を自分で選び直す必要がある、役職欄に代表社員がない、検索で上位に出てこない。どれも一つひとつは小さいのですが、自分で設立する場合はすべて自分の作業時間として現れます。私たちの場合、この手間は設立準備の期間を通じて確実に効いてきました。
逆に言えば、この部分は専門家に依頼すれば消える手間でもあります。当サイトでは、こうした作業を自分で抱えるか任せるかで迷っている人向けに、会計事務所SoVaの「士業伴走プラン」を紹介しています。設立サポート手数料は0円ですが、設立後の顧問契約(月1.5万円〜)が前提となる仕組みです。遷移先のページでは「自分でやるより最大14.5万円お得」という比較も示されていますが、この数字の出典は遷移先のサービスページであり、顧問契約が前提であることとあわせて、最新の料金・条件は必ず公式ページでご確認ください。
この記事に書いた制度の内容は2026年9月2日時点で一次情報を確認したものです。合同会社の設立を自分でやるかどうかを考えているあなたが、手間の量まで含めて見積もるための材料になれば幸いです。

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