合同会社の電子定款だけを行政書士に頼むという選択肢|自分で作った側から見た損得

手順:紙の定款には印紙税がかかり、電子定款にはかからない
電子定款を選ぶ理由は、突き詰めれば印紙税です。国税庁の印紙税額の一覧表によれば、定款は第6号文書にあたり、印紙税額は4万円とされています。課税されるのは、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社・相互会社の設立のときに作成される定款の原本に限られます。
つまり、合同会社の設立でも紙で定款の原本を作れば印紙税の対象になります。ここは株式会社と変わりません。一方で、印紙税は文書に対して課される税なので、紙で作成しない電子定款では、この4万円がかかりません。
私たちは、この4万円を節約するために電子定款を選びました。合同会社の設立にかかる費用の中で、登録免許税に次いで大きい金額であり、削れる余地があるならまず検討すべき項目だと考えたためです。
ここで押さえておきたいのが、合同会社では定款の公証人による認証が不要だという点です。株式会社の場合、電子定款にすると認証の手続きも電子的に行うことになり、そのぶん手順が増えます。合同会社にはその工程がないため、電子定款の話は「印紙税がかからない形式で定款を作る」という一点に集約されます。
この構造の違いがあるので、株式会社向けに書かれた電子定款の解説をそのまま読むと、合同会社では不要な手続きまで自分に必要だと思い込みかねません。合同会社の設立を自分で進めるなら、まずここを分けて理解しておくとよいと思います。


出典:国税庁:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで
手順:自分で電子定款を作るために揃えたもの
電子定款を自分で作る場合、定款の内容を書く作業そのものは紙と変わりません。違うのは、作った文書を電子的な形式にして、そこに電子署名を付ける工程です。この工程のために、いくつか用意しておくものがあります。
必要になるのは、電子署名ができる環境です。本人であることを証明する電子証明書と、それを読み取るための機器、そして署名を付けるためのソフトウェア。私たちはこれらを一通り揃えたうえで作業しました。
実際にやってみて分かったのは、作業そのものより、環境が正しく動くまでの確認に時間がかかるということです。機器が認識されない、ソフトが想定どおりに起動しない、といった段階でつまずくと、定款の中身とは無関係なところで時間を使うことになります。
この環境は、電子定款を作るときだけのものではありません。登記のオンライン申請や、その後の各種手続きでも使う場面があります。私たちは設立後も使う前提で揃えたので、初期費用として納得できました。逆に、設立のときだけ使うつもりなら、割に合わないと感じる可能性があります。
作業の順番としては、先に環境を整えて動作を確認しておき、定款の内容が固まってから署名の工程に入る、という進め方が安全でした。内容が固まったあとに環境の問題が出ると、そこで待たされることになるからです。私たちは定款の文言を練っている期間と並行して環境を用意しました。
もうひとつ気をつけたのは、署名を付けたあとに内容を直すと、署名をやり直すことになるという点です。紙であれば書き直せばよいところが、電子定款では工程を戻ることになります。合同会社は公証人の認証がないぶん直前まで書き直せますが、署名の工程だけは最後に置く必要がありました。

出典:登記・供託オンライン申請システム:申請用総合ソフトとは
手順:電子定款の作成だけを切り出して依頼できる
調べていて分かったのは、設立の全工程ではなく、電子定款の作成部分だけを請け負うサービスが行政書士事務所を中心に存在するということです。定款の内容は自分で決めて渡し、電子的な形式にして署名を付ける部分だけを任せる、という使い方になります。
この形であれば、自分で環境を揃える必要がありません。印紙税の4万円は節約でき、そのぶん依頼料が発生するという構図になります。差額がプラスになるかどうかは、依頼料と、自分で環境を揃えた場合の費用の比較で決まります。
私たちは自分で環境を揃える道を選びましたが、それは設立後も同じ環境を使う見込みがあったからです。もしその見込みがなかったら、この部分依頼を選んでいた可能性は十分にあると思います。
なお、この部分依頼を実際に利用した経験は私たちにはありません。ここは公開されているサービス内容にもとづく説明であって、実体験として書いているものではありません。依頼を検討する場合は、対応範囲と料金を各事務所に直接確認してください。
合同会社の設立を自分でやると決めていても、全工程を自分で抱える必要はない、という点だけは押さえておく価値があると思います。自分でやる範囲と任せる範囲は、工程ごとに引き直せます。
この考え方は、電子定款以外の工程にも当てはまります。定款の内容を決めるのは自分、条文の表現を点検してもらうのは専門家、登記申請書を書くのは自分、というように分けていくと、依頼する範囲を必要最小限に絞れます。全部任せるか全部自分でやるかの二択にしないほうが、費用の面でも納得しやすくなりました。

4つまずき:株式会社向けの解説を読んで手順を多く見積もっていた
準備の初期段階で、私たちは電子定款の手順を実際より複雑なものだと思い込んでいました。読んでいた解説の多くが株式会社を前提にしていて、電子定款を公証役場で認証してもらう手順まで含めて説明していたためです。
合同会社にはこの認証の工程がありません。それに気づいたのは、法務省の合同会社の設立手続についての案内を読んだときでした。株式会社との違いを意識せずに解説を読んでいると、自分には不要な工程まで見積もりに入れてしまいます。
この思い込みは、判断そのものを歪めます。手順が多いと思っていれば、自分でやるのは無理だという結論に傾きますし、逆に実際より簡単だと思っていれば準備が足りなくなります。どちらの方向にもずれる可能性があるので、工程の数は一次情報で確認しておくのが確実です。
合同会社の場合、電子定款に関して必要なのは「電子的な形式で作って署名を付ける」ところまでです。この一点に絞って考えると、判断すべきことは環境を揃えるかどうかだけになります。
同じ理由で、費用の見積もりもずれていました。株式会社向けの解説には公証人への手数料が含まれていることがあり、それを合同会社の費用として計算していると、実際より高く見積もることになります。合同会社では認証がないため、この手数料はかかりません。
私たちは、費用の内訳を自分で組み直してから判断しました。合同会社の設立で必ずかかるのは登録免許税と、紙の定款を作る場合の印紙税、そして証明書類の取得費用です。ここに電子定款の環境をどうするかという選択が乗る、という構造で整理すると見通しがよくなります。

つまずき:節約額と手間を同じ土俵で比べられなかった
もうひとつ迷ったのが、印紙税の4万円という節約額と、自分で環境を揃える手間を、どう比べればよいのかという点でした。片方は金額で、もう片方は時間なので、そのままでは比較になりません。
私たちは、自分の作業時間に仮の単価を置いて金額に換算するという方法を取りました。環境を揃えて動作を確認し、実際に署名を付けるまでにかかった時間を見積もり、それを金額に置き換えて4万円と比べる、という考え方です。
この換算は厳密なものではありませんが、少なくとも「なんとなく自分でやったほうが得な気がする」という状態からは抜けられます。合同会社の設立を自分で進めるかどうかの判断は、こうした換算をいくつか積み重ねて決めることになります。
結果として私たちは自分で作る側を選びましたが、それは環境を設立後も使う見込みがあったからで、時間単価の比較だけで決めたわけではありません。判断の材料が複数あるときは、どの材料をどれだけ重く見たかを自分で記録しておくと、あとで振り返りやすくなります。


つまずき:依頼の範囲を伝える言葉が定まっていない
電子定款の部分依頼について調べていて分かりにくかったのは、サービスの呼び方が事務所ごとに違うことでした。「電子定款作成」「電子定款認証代行」「定款作成サポート」など、名前だけでは範囲が読み取れません。
合同会社には認証の工程がないため、名称に「認証」が含まれているサービスは株式会社を主に想定している可能性があります。そのまま問い合わせると、話が噛み合わないところから始まってしまいます。
問い合わせる際は、名称ではなく工程で伝えるほうが確実だと思います。定款の内容は自分で用意していること、合同会社であること、必要なのは電子的な形式にして署名を付ける部分であること。この3つを最初に伝えれば、対応可能かどうかがすぐ分かります。
これは行政書士に限らず、設立に関して外部に依頼するとき全般に言えることでした。サービス名で探すのではなく、自分がやってほしい工程を先に言葉にしておくと、探す時間が短くなります。
もうひとつ、依頼する場合に確認しておきたいのが、定款の内容そのものに手を入れてもらえるのかどうかです。電子化だけを請け負う形なのか、条文の内容についても意見をもらえるのかで、依頼の意味が変わります。私たちは内容を自分で決めきる前提で考えていましたが、そこに不安があるなら、内容の点検まで含む形を探すことになります。

限界:どちらが得かは、設立後にその環境を使うかで変わる
自分で電子定款を作るか、その部分だけ依頼するかの損得は、設立のときだけを見て決められるものではありませんでした。判断を分けるのは、揃えた環境を設立後も使うかどうかだからです。
登記のオンライン申請、各種の電子的な手続き、その後の届出。これらで同じ環境を使う見込みがあるなら、設立時に揃えておく意味は大きくなります。逆に、設立が終わったら当面使わないのであれば、そのために環境を揃えるのは効率がよくありません。
この見通しは事業の進め方によって変わるので、一律の正解はありません。私たちは使う見込みがあると判断しましたが、それは自分たちの事業内容にもとづく判断であって、他の人に当てはまるとは限りません。
また、私たちは電子定款の部分依頼を実際に使っていないため、依頼した場合の所要日数ややり取りの負担については分かりません。この点も含めて、検討する場合は各事務所に直接確認することをおすすめします。
それでも、判断の枠組みそのものは共通だと思います。節約できる印紙税の額は決まっているので、そこから依頼料を引いた残りと、自分で環境を揃える費用と時間を比べる。この形にすれば、どちらを選ぶにしても自分で説明できる根拠が残ります。合同会社の設立を自分で進めるうえで、この根拠を残しておくこと自体に意味があると感じています。

まとめ:全部か自分でかの二択にしなくてよい
合同会社の設立を検討していると、専門家に全部頼むか、自分で全部やるかの二択で考えてしまいがちです。しかし実際には、工程ごとに線を引き直せます。電子定款の作成だけを行政書士に依頼するというのは、その中間にあたる選択肢です。
電子定款を選ぶ理由は印紙税で、定款は第6号文書として4万円が課され、合同会社の定款もその対象に含まれます。紙で原本を作らなければこの4万円はかかりません。合同会社は公証人による認証が不要なので、電子定款に関して必要なのは電子的な形式にして署名を付けるところまでです。
自分で作る場合は電子証明書と読み取り機器、署名用のソフトが必要で、環境が正しく動くまでの確認に時間がかかります。この環境を設立後も使う見込みがあるなら自分で揃える意味が大きく、設立のときだけなら部分依頼のほうが合理的になる可能性があります。私たちは前者と判断して自分で作りました。
当サイトでは、この線引きで迷っている人向けに、会計事務所SoVaの「士業伴走プラン」も紹介しています。設立サポート手数料は0円ですが、設立後の顧問契約(月1.5万円〜)が前提となる仕組みです。遷移先のページには「自分でやるより最大14.5万円お得」という比較も掲載されていますが、この数字の出典は遷移先のサービスページであり、顧問契約が前提であることとあわせて、最新の料金・条件は必ず公式ページでご確認ください。
この記事に書いた税額や制度の内容は2026年9月3日時点で国税庁・法務省の一次情報を確認したものです。税額や要件は改正されることがあるため、実際に判断する際はその時点の案内をご自身で確認してください。

出典:国税庁:No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで
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